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長期間の低線量放射能被爆が白血病を引き起こすことが疫学調査で立証。国際がん研究機関、WHO等の共同研究。福島の事故処理体制に影響の可能性(FGW)

2015-07-02 15:36:57

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 国際がん研究機関(IARC:本部パリ)と世界保健機関(WHO)らによる共同研究の結果、長期間、低線量の放射線を浴びることで、白血病を引き起こすことが疫学的に示された。調査は米英仏3カ国の原発施設で働く作業員30万人以上の健康状況を半世紀以上にわたって調査した。現在、各国が採用している放射線防護基準は、急性高線量の被爆からの保護を基準としているが、新たに低線量放射線を浴びる原発労働者や、放射線技師、さらに福島原発のような事故原発周辺で今後、長期にわたって生活する住民らを対象とした新たな基準設定の必要性が浮上してきた。

 

 IARCとWHOの研究は、国際原子力労働者研究(INWORKS)の協力を得てまとめられた。英医学誌ランセット・ヘマトロジーに発表された。調査対象は、米英仏3カ国の原発労働者30万人以上で、1943年から2005年までの62年間に白血病、骨髄症、リンパ腫瘍などの発生率を調べた。労働者は少なくとも1年以上、原発関連施設で働いた人を対象とした。

 

 その結果、被ばくがなくても白血病を発症する可能性を1とする「相対リスク」を考えた場合、1ミリシーベルトの被ばくごとに相対リスクが1000分の3ほど上昇することがわかった。100ミリシーベルト以下の低線量でもリスクはなくならないとした。対象となった作業員の年間被ばく線量は平均1.1ミリシーベルト、積算線量は平均15.9ミリシーベルトで、このうち531人が白血病で死亡している。

 

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 研究は「白血病について放射線被爆が白血病による死亡に影響を及ぼしていることは『強い証拠』が得られた」としている。特に慢性の骨髄性白血病の発症で最も高いリスクが示された。ただ、慢性のリンパ腫白血病ではリスクの増加はみられなかった。また骨髄症あるいはリンパ球腫等は明確なリスク上昇はほとんどみられなかった。

 

 これまで低線量被ばくの健康影響を統計的に示した研究は少ない。現行の基準は、日本での広島・長崎の原爆被害に伴う急性高被爆の被害状況を前提として設定されているが、今後、長期にわたって事故原発の処理作業が続く東電福島第一原発の作業員や、原発周辺の放射線被爆地域に早期帰還した住民の健康管理をどうするかという問題を提起したことになる。

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http://www.thelancet.com/journals/lanhae/article/PIIS2352-3026(15)00094-0/abstract