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東電担当者 福島原発事故の2年前、保安院から津波対策要請受けるも 渋り・実施せず。”不作為犯”の可能性(各紙)

2015-09-27 02:14:31

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 政府は、2011年3月11日の東京電力福島第一原発事故で、政府事故調査・検証委員会が関係者に聴取した調書(記録)を新たに公表した。その中で、事故の2年前に原子力安全・保安院(当時)の審査官が、東電に具体的な津波対策の検討を求めたが、東電担当者が「原子炉を止めることができるのか」などと渋り、実際にも対策をとらなかったことがわかった。

 

 調書によると、東電に津波対策を求めたのは、保安庁の名倉繁樹安全審査官(現原子力規制庁安全審査官)。名倉氏は、東北地方太平洋岸で大きな被害を引き起こした貞観地震津波(869年)を踏まえて、東電から福島第一原発での津波の高さが8m台になるとの試算を示された。これを受けて、具体的な対策を取るよう、東電側に検討を求めた。

 

 しかし、名倉氏の要請に対して、東電側は「土木学会の検討を待つ」と回答して対応を保留。さらに名倉氏が、需要施設を建屋内に入れることを提案したところ、「(対策のために)原子炉を止めることができるのか」と対応を渋ったという。これに対して、調書で名倉氏は「腹が立った」と語っている。しかし、名倉氏もそれ以上、東電に対策を求めることはしなかった。

 

 東電福島原発事故被害者で結成する福島原発告訴団は、名倉氏について、大津波の予測をしながら、対策を怠ったとして、告訴・告発の対象者の一人となっている。

 

 また、前原子力規制委員長代理の島崎邦彦氏の調書では、2002年に国が出した地震や津波の発生予測の長期評価に、貞観津波と同規模の津波が発生する危険性についての指摘が、知見が不十分だったことから盛り込まれなかったことを、「残念」と悔やむ発言が示されている。

 

 当時、島崎氏は地震予知連絡会会長だったが、国の防災を検討する中央防災会議でも、大規模津波の発生については否定の方向で、島崎氏は「防災の要の部署が否定した」と発言している。大津波を引き起こす地震の予測についても、島崎氏は「誤解していた。津波地震に対する我々の考え方は、180度間違っていた」と予測の誤りを認めている。

 

 保安院と東電とのやり取りで明るみに出たことで、東電が大津波の予測しながら、原子炉の運転を止めることを嫌って対策をとらなかったこと明らかになっただけでなく、保安院が対策の必要性を認めながら、東電の渋り(あるいはサボタージュ)を事実上、受け入れる対応をしたことも明らかになった。

 

 東電と保安院がともに、「不作為犯」の可能性を示す調書といえる。