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チェルノブイリ原発事故 30年を経ても、1100km離れたオーストリアで、同国の基準を7倍超過のイノシシ肉検出。日本の基準なら47倍超(各紙)

2016-04-27 12:29:11

boarキャプチャ

 

 各紙の報道によると、オーストリアの保健・食品安全局は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故から30年を迎えたことを機に、同国の森林などでの植物、土壌調査を実施した。その結果、森で生息するイノシシの肉から、最大で1kg当たり4700ベクレルの放射性セシウム137を検出した。

 

 最大値は同国の食品基準値(1kg当たり600ベクレル)の7倍超だった。発表によると、イノシシ肉39の検体のうち、全体の7割近い26検体で基準値を超えた。セシウム137の半減期は約30年とされる。30年を経て半分に減ったとしても、これだけの汚染が続いていることを実証した。

 

 同局が、事故から25年に当たる2011年の11月-12年3月に同様の調査を実施した際、イノシシ肉の最大セシウム量は1kgム当たり408ベクレルと、基準内だったが、今回は大幅に超過したことになる。森林の汚染状況が変わっていないことを示す。

 

 同局は「今なおチェルノブイリ事故によって飛散したセシウムが土壌に残り、森林の生態系に影響を与えていることが示された」と指摘している。

 

 その一方で、セシウム値がもっとも高いイノシシ肉を1年間に2.5kg食べた場合でも、年間の被ばく線量は0.15ミリシーベルトで、同国の食べ物を通じた自然被ばく線量の半分程度と説明している。

 

 日本の場合、肉を含む食品のセシウム基準値は1kg当たり100ベクレル。オーストリアのイノシシは日本基準ならば47倍超過となる。現在も、福島県の森林等で捕獲されるイノシシの多くの放射線量は、国内基準を大幅に上回っており、その処理が課題となっている。

 

 今回のオーストリア保健・食品安全局の調査は、昨年夏に同国の森林のほか、隣接するドイツ南部などで、生息するイノシシの肉や、植物、土壌などの放射線量を調査した。

 

 今回の調査で、もっともセシウム値が高かった検体は、チェルノブイリ原発から約1100km以上も離れたオーストリア北東部ニーダーエスタライヒ州の森林に生息していたイノシシ。

 

 植物では、キノコやコケモモがそれぞれ1検体ずつ基準値をわずかに上回るものが検出されただけだった。

 

 同局では、イノシシ肉に高濃度のセシウムが残っている理由として、森林などの土壌の表層に降り注いだセシウムが依然、残っているためとみている。イノシシは土壌を掘り起こして植物の根や小動物などを食べる習性があることから、放射性物質が継続的に蓄積することになるとみられている。