HOME13 原発 |米スリーマイル島原発、稼働中の2号機の9月閉鎖、正式に決まる。州の支援得られず。保有のエクセロン社が表明。本格的な廃炉作業の開始は2074年移行に(RIEF) |

米スリーマイル島原発、稼働中の2号機の9月閉鎖、正式に決まる。州の支援得られず。保有のエクセロン社が表明。本格的な廃炉作業の開始は2074年移行に(RIEF)

2019-05-09 15:57:03

Threemilenuke1キャプチャ

 

 米電力大手エクセロン(Exelon)は、1979年に炉心溶融事故を起こしたペンシルバニア州の米スリーマイルアイランド原発(TMI)で、事故後も発電を続けていた1号機を9月30日までに閉鎖すると正式に発表した。閉鎖方針は2年前に打ち出していたが、雇用対策等を重視する地元議会が支援策を検討していた。しかし支援策が議会で承認される見通しが立たなかった。

 

 (写真は、スリーマイル島原発、上部2基の煙突が9月に閉鎖される1号機、手前の2基は40年前に事故を起こした2号機)

 

 事故を起こした2号機はすでに閉鎖されており、1号機の閉鎖で、TMI原発は全面的に閉鎖される。エクセロンは2年前に閉鎖方針を公表した後、ペンシルバニア州議会では、稼働中にCO2を排出しない原発は温暖化対策になるとして、10月以降の運転継続のために必要な核燃料購入資金を支援する法案が提出されていた。運転を続けるには6月1日までに新たに核燃料を購入する必要がある。

 

 しかし、他の原発と違い、「スリーマイル島原発」は事故のイメージがつきまとうこともあり、議会での審議は進まず、支援法案成立の見通しが立たなかった。エクセロンの上級副社長で原子力責任者のBryan Hanson氏は「今日は、われわれの従業員にとって厳しい日となった。他のクリーンエネルギーと同様に、カーボンフリーの原発エネルギーを州議会が支援するとの期待を持っていたが、そうならなくなった」と州議会の対応を批判する形で、閉鎖を発表した。http://rief-jp.org/ct4/70316

 

  従業員や周辺のコミュニティにとっては、雇用の場である原発の閉鎖は、大きな打撃となる。同労働組合幹部のRichard Drey氏は「従業員全員にとって悲しい事態だ。閉鎖ではなく、継続されると、みんなが思っていた。ショックだ」と、メディアにコメントしている。

 

 ThreemileIrelandキャプチャ

 

 Hanson氏は、現在、同原発で働く約700人の従業員がいるほか、関連の契約労働者等を含めると1500人規模の雇用が失われることになる。エクセロンで引き続き働きたい人については、同社の他の職場を確保する、と伝えている。また、閉鎖後の原発でも、廃炉作業に移行するための準備作業に、2022年までで、50人のフルタイム従業員が必要という。

 

 同社の試算では、同原発の廃炉費用は約12億㌦(約1320億㌦)とみている。廃炉原発の解体は原子炉の冷却が完了してからになるので、同社では冷却装置等のような主要部分の解体は、2074年までは手掛けられない、としている。その間、廃炉関係の雇用は一定水準にとどまる。東京電力福島第一原発の場合、事故で放射性物質が周辺に拡散したことから、除染等の仕事が生まれたほか、冷却期間を置かずに事故対応を迫られていることから、廃炉作業に多くの労働者を投入せざるを得なくなっており、状況が異なるといえる。

 

 TMIの原発閉鎖を求めてきた環境団体の「Three Mile Island Alert」の会長、Eric Epstein氏は、今回の決定を歓迎するとともに、「喜んでいる暇はない。閉鎖によって、廃炉作業、という長くてチャレンジングなフェーズに移行する。原子炉のクリーン化を確実に実現できるよう、厳しくチェックしていかねばならない」と気を引き締めている。

 

 TMI周辺の住民の間では、1号機の閉鎖は微妙な評価となっている。2号機の事故によって起きた低濃度放射線被爆の影響は、住民の間で甲状腺がんの増加等の形で引き続き増大している。事故後の象徴として操業していた1号機が閉鎖され、人々の関心がTMIから離れることが予想される。しかし、そうなっても、被爆あるいは被爆懸念となった健康への不安は引き続く。http://rief-jp.org/ct13/88110

 

TMI事故後に、現地視察に訪れた当時のカーター大統領
TMI事故後に、現地視察に訪れた当時のカーター大統領

 

  スリーマイル島原発事故は、2号機の点検作業中に給水ポンプが停止し、炉心の圧力が上昇。その連鎖反応で、炉心上部がむき出しになり、燃料棒が毀損、炉心溶融を起こした。原発事故では、実際に放射性物質の外部流出が一部でみられ、国際原子力事象評価尺度(INES)でのレベル5(事業所外へのリスクを伴う)の事故と認定された。東京電力福島第一原発事故は、チェルノブイリ原発事故と同様、最上位のレベル7(深刻な事故)だった。事故当時の原発所有企業は、メトロポリタン・エジソン社。その後、エクセロンが引き継いでいる。

 

 TMIの2号機はそのまま閉鎖されたが、1号機は正常に稼動していたため、2034年までの運転許可を得ていた。しかし、ペンシルバニア州が設定している「代替エネルギーポートフォリオ基準(AEPS)」の対象外とされ、シェールガスの普及による電力価格の下落で、採算が悪化していた。エクセロンによると、過去7年間で累計8億㌦(約890億円)の損失を出していたという。

https://www.exeloncorp.com/newsroom/Pages/Three-Mile-Island-Unit-1-To-Shut-Down-By-September-30,-2019.aspx

https://www.nytimes.com/2019/05/08/us/three-mile-island-shut-down.html