国連グテレス事務総長、米軍の南太平洋での核実験で生じた「核の棺」から、放射性物質の漏洩リスクの高まりに懸念。老朽化と温暖化の影響も(RIEF)
2019-05-18 13:10:25
国連のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は16日、訪問した太平洋のフィジーで演説、米国が戦後、マーシャル諸島での核実験で生じた放射性物質を投棄したコンクリート製のドームが、老朽化と温暖化の影響による海面上昇等のため、閉じ込められた放射性物質の漏洩リスクが高まっていると、懸念を表明した。同氏はこのドームを「核の棺(Nuclear coffin)」と呼んだ。
(写真は、老朽化が進む「核の棺」)
グテレス氏は、フィジーで同地の学生らを前に温暖化対策の必要性等について演説した。その中で、米軍が第二次大戦後の1946年~1958年にかけて、マーシャル諸島のビキニ(Bikini)やエニウェトク(Enewetak)の環礁で合計67回にもわたって実施した核実験の影響について触れた。
実験後、膨大に排出された放射性物質に汚染された廃棄物は、エニウェトク環礁の一部であるルニット(Runit)島に1970年代後半にコンクリート製の円形ドームを建設、その中に投棄されて、今日に至っている。
グテレス氏はこのドームを、冷戦期の太平洋における核実験の遺物であり、「一種のひつぎ」と表現した。同時に、ドームに封じ込められている放射性物質の漏出の恐れを非常に懸念していると述べた。
ドーは、核実験で生じたクレーター内に、実験で発生した放射性物質で汚染された土や灰などを、投棄し、その上を厚さ45cmのコンクリート板で覆ったもの。当時は一時投棄の位置付けで、クレーター底面には何らの加工もされていないという。このため、以前から汚染物の海洋流出の危険性が指摘されていた。
建設からすでに40年以上を経過したドームには、各所に複数のひびが入っている。サイクロンが直撃した場合には崩壊しかねないと危惧する声もある。また温暖化の影響で海面上昇が加速すると、ドーム自体が海面に接し、ひび割れから海水が内部に流入し、放射性物質の漏洩が拡大する可能性もある。
グテレス氏はドームへの対応策には直接言及しなかったものの、太平洋の核の歴史は過去のものではないという見方を示した。またマーシャル諸島共和国のヒルダ・ハイネ大統領との面談で、大統領が放射性物質漏洩のリスクへの懸念を高めていることを伝えられたとも述べた。
グテレス氏は、温暖化対応を促すため南太平洋諸国を訪問した。
https://www.msn.com/en-us/news/world/un-chief-concerned-nuclear-coffin-leaking-in-pacific/ar-AABrcbn