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韓国の原発。原子炉に異常発生も、11時間半にわたって稼働。規制当局は事態を重視し、同機の使用停止を命じる(各紙)

2019-05-22 11:23:25

Korea2キャプチャ

 

  各紙の報道によると、韓国の韓国原子力委員会は、南西部の全羅南道(チョルラナムド)・霊光(ヨングァン)にあるハンビッ原子力発電所1号機で、原子炉の熱出力が制限値を超えて急上昇、約11時間30分にわたって、異常事態が継続した、と発表した。放射性物質の漏洩等は現時点では確認されていないが、同委員会は重大事故につながる恐れがあったとして、同機の使用停止を命じた。

 

 (写真は、グリーンピースの活動家が2014年12月、ハンビッ原発の前で原発稼動中止を求めて実施した抗議行動)

 

 東京新聞が報じた。同原発は韓国水力原子力(韓水原)が運営している。同委員会によると、異常事態が生じたのは今月10日。韓水原が原子炉の制御棒の試験中に熱出力が制限値の5%を超えて18%まで上昇したという。しかし、韓水原は即時停止しなかった。

 

 韓国の原子力安全法では、熱出力が制限値を超えた場合は原子炉の稼働をすぐに停止するよう定めている。また、同原発では、制御棒を無資格者が操作していたことも明らかになった。

 

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 こうしたことから同委員会は、特別司法警察官を投入し、原因の調査を始めた。韓国メディアによると、特別司法警察官の投入は原発の商業運転が始まった1978年以降、初めてという。

 

 同委員会の孫明善(ソンミョンソン)安全政策局長は「事故には至らなかったが、今までに起こった国内の原発の問題の中で非常に深刻な状況なのは間違いない」と述べ、重大な事故につながる危険性があったとの認識を示した。

 

 一方、運営主体の韓水原は、熱出力が上昇後すぐに制御棒を挿入したと主張しているという。また、同原発は出力が25%を超えれば原子炉が自動停止する設計になっており、事故が起きる恐れはなかったと反論している。

 

 問題が発覚したハンビッ原発ではこれまでにも、不良部品の使用が判明し、環境団体等が使用停止を求めていた。韓国では今年に入ってからも、原発が突然停止するなどの問題事案が相次いでいる。韓国内にある商業用原発24基のうち18基は日本海側にあるため、重大な事故が起きると、日本にも被害が及ぶ可能性がある。

 

 東京工業大の奈良林直特任教授(原子炉工学)は次のようにコメントしている。

 

 「東京電力福島第一原発事故以降に各国が原子力の安全対策に取り組む中、無資格の職員が操作し、運営指針に違反した状態で長時間の運転が続いたのはあってはならず、安全文化上の深刻な問題だ。原子炉出力がごく短時間で18%まで上がるのは異常な急上昇だ。燃料や機器などが傷んでいないか総点検するべきだ。ただ出力が上がると通常自動ブレーキがかかるため、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故のような爆発に至るとは考えられない」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201905/CK2019052202000137.html