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東電福島第一原発の汚染処理水保管問題で、市民団体「原子力市民委員会」が、敷地内の土捨て場や中間処理施設用地を活用すれば十分対応可能と指摘。環境省等に見解送付(RIEF)

2019-10-03 16:16:38

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  東京電力福島第一原発のトリチウム汚染処理水の取り扱い問題で、市民団体「原子力市民委員会」は、①処理水は海洋放出するべきではなく、大型タンクによる長期保管を検討するべき②その用地は原発敷地内にある③米国で実施しているモルタル固化による処分も検討すべきーーとする見解をまとめ、環境省、経済産業省、原子力規制委員会に送付した。

 

 福島第一原発の放射性汚染水は多核種除去設備(ALPS)で処理後、敷地内のタンクで保管されているが、放射性物質のトリチウムについては除去できていない。このため東電は処理水の入ったタンクの設置限界が近づいているとし、これを受けた前環境相の原田義昭氏が「海洋放出しか方法がない」と発言。「放出」か「保管」かの議論が続いている。

 

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 原子力市民委員会は、原発ゼロ社会の構築のための具体的かつ現実的な政策提言と、そのための「公論形成」が必要と指摘。従来から汚染処理水問題についても取り組んでいる。

 

 今回の見解公表で示した資料で、同委員会は、経産省が開催している「多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会」の第13回小委員会(8月9日)と第14回小委(9月27日)での主要意見を紹介している。

 

 それによると、タンク保管の敷地として、北側の土捨て場と、周辺の除染廃棄物中間貯蔵施設への拡大可能性が言及された。第13回では東電側は、土捨て場について「廃炉行程で生み出される廃棄物は東電敷地内で保管したい」と運用上の問題との認識を示し、一方の中間貯蔵施設の利用には「無理ではないだろう」と検討を示したことを紹介している。

 

 ところが第14回では、東電は、土捨て場については「廃炉事業に必要な施設のために(敷地を)確保したい」。中間貯蔵施設については「拡大は難しい」と慎重姿勢に転じたという。

 

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 原子力市民委員会は、東電が廃炉事業のために、将来、土捨て場に計画すると考えられる施設として、使用済み燃料や原子炉から取り出した燃料デブリ等の一時保管施設等を列挙するとともに、「そもそもデブリ取り出しは現実的か」と疑問符をつけている。また想定される多くの施設は敷地外でも建設可能なものであり、「(タンク増設等の)緊急対処事項が優先されるべきだ」と指摘している。

 

 また除染廃棄物中間貯蔵施設は、総面積約1600haもある広大な敷地で、環境省の所管で約70%が契約済みという。環境相は「所管内」でこの敷地をタンク増設のための契約として結ぶことは可能なのだ。しかし、原田前環境相は、東電の原発事故が原因で発生した除染廃棄物と汚染処理水を「所管分け」して、所管外の経産省の担当の部分だけに言及したことになる。

 

 9月27日の小委の議論では、原子力規制庁の担当者が「中間貯蔵施設の汚染水貯蔵への利用は難しい。しかし、廃棄物として管理されるならば、持ち出しは可能」との回答をしているという。単に廃棄物と、汚染処理水という役所の所管の違いを理由にあげているに過ぎない。

 

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 東電は貯蔵タンクを大型化して貯蔵量を増やすべきとの質問に対しては、①1基当たり設置に3年、検査等に1年かかる②大型化しても敷地利用効率は標準タンクと大差ない③破損した場合の漏洩量増大ーーなどの理由で難色を示したという。これに対して市民委員会は「民間プラントの建設では1.5~2年で設置できる。東電は実に間延びしている」と指摘。②③についても大型化のメリットを軽視した発言としている。

 

 モルタル固化による処分は、米国で1950年に設置された軍事用施設オ「サバンナリバー施設」で低レベル汚染水をセメント、砂とともにモルタル固化し、コンクリートタンクの中に流し込んで貯留する方法として実施されている。市民委員会は「コスト削減などを含め、検討する意義は十分にあると考えられる」としている。

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