「ドイツ版電事連」の独エネルギー水道事業連合会(BDEW)次期事務局長に、グリーン党のK・アンドレー氏が就任へ。脱原発・脱石炭のエネルギー政策を反映し、エネルギー業界もグリーン化へ(RIEF)
2019-09-09 17:54:55
ドイツのエネルギー業界ロビー団体「ドイツ・エネルギー水道事業連合会(BDEW)の次期専務理事に、連邦議会のグリーン党(同盟90/グリーン党)の女性議員、ケアスティン・アンドレー(Kerstin Andreae)氏が就任する。BDEWは日本の電気事業連合会に相当するだけに、エネルギー業界で話題になっている。正式の就任は11月1日の予定。
アンドレー氏はドイツのバーデンヴュルテンベルク州シュランベルクの出身。若い時から地元「黒い森」の自然保護活動等に参加、学生時代にグリーン党に参加している。大学卒業後、民間企業に務めた後、グリーン党議員のプレス担当として政治の世界に入った。
2002年に連邦議員となり、財政委員会の議長、経済技術委員会の部会のスポークスウーマン等を歴任。2012年にグリーン党の副代表の一人に就任した。これらの経歴から、彼女は“生粋のグリーン”といえる。グリーン党では経済政策を担当してきた。ただ、エネルギー分野の経験はあまり経験はない。
今回のBDEW専務理事の人事は、もっぱらBDEW側の事情と、ドイツのエネルギー環境の変化が背景にあるようだ。ドイツは2022年末までに原発をゼロとし、2038年末までに石炭火力発電をゼロとする国家目標を立てている。脱原発、脱石炭を実践すると、エネルギーは天然ガスと再生可能エネルギー等が軸となる。
電力・水道業界団体のBDEWにとって、原発・石炭事業からガス・再エネ両分野への移行をできるだけスムーズに進め、新たな事業基盤を確保する以外にない。脱原発、脱石炭の2大エネルギー政策目標を今後、転換させるのは無理とすれば、他のEU加盟国との「グリーン化競争」で、脱石炭の目標を大幅前倒しとなることは何としても避けたいとの思惑も指摘される。
政治混迷が続くドイツ政界では、さすがにメルケル長期政権にも陰りが生じている。極右政党「ドイツのための選択(AfD)」の躍進の対極として、「同盟90/グリーン党」の存在感が増している。直近の政党支持率調査では、グリーン党がもっとも人気を得ている。メルケル首相は2021年限りで引退を表明しており、「メルケル後」のドイツ政界で、グリーン党の存在感がさらに高まるのは間違いないとみられている。
一方のグリーン党にとっても、今後、ガス・再エネを主要市場とするエネルギー業界との連携は「理想だけではなく、実態を踏まえたエネルギー・経済政策を展開する政党」としての支持を得ることにつながる可能性がある。「現実的なグリーン政策」を掲げることで、2021年の総選挙で連立政権入りし、政権内での主導権を確保する狙いも指摘されている。
アンドレー氏は、プライベートでは一度離婚、現在の夫は元グリーン党首のボルカー・ラッツマン氏。3人の子どもの母親でもある。次期欧州委員会委員長に、ウルズラ・フォン・デアライアン氏の就任が決まるなど、ドイツの女性政治家の活躍の場が広がっている。