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第6回サステナブルファイナンス大賞インタビュー②太陽生命保険。新型コロナウイルス感染入院一時金保険の開発で「優秀賞」。本業でのESG取り組みを評価(RIEF)

2021-02-03 16:06:31

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写真は、㊧から山本利明RIEF理事、副島直樹太陽生命社長、田中勝英同会長、藤井良広RIEF代表理事)

 

 太陽生命保険は、新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、同社の医療保険に災害および感染症による保障を上乗せした「感染症プラス入院一時金保険」を昨年9月に発売しました。同取り組みが、本業を活用したサステナブルファイナンスの実例として、優秀賞に選ばれました。同社は、国連支援の責任投資原則(PRI)に日本の生保として最初に署名して以来、資産運用面でグリーンボンドやグリーンローン等への取り組み等、ESG投融資を積極的に展開していることも評価されました。取締役常務執行役員の下屋敷縁(しもやしき・ゆかり)氏と、運用企画部長の本田孝宏(ほんだ・たかひろ)氏に話を聞きました。

 

 ――新型コロナウイルス感染で入院した場合に、入院一時金を従来の倍額の最高40万円を支払う「感染症プラス入院一時金保険」を発売されました。コロナ感染不安が広がる中で、時宜を得た医療保険の提供でしたが、どのような判断で商品化を進められたのでしょうか。

 

 下屋敷氏:実はその前年(2019年)の秋に、入院の短期化と支出面を考慮した新たな入院一時金保険の販売を開始していました。それらを販売する中で、新型コロナウイルス感染が広がってきました。そこで、昨年3月くらいに、コロナで入院される人の不安を減少させるために、この保険を適用し、入院一時金額も倍に増やせないかと、内部で検討を重ねました。経営の判断も早かったです。4月末には取締役会で承認され、金融庁の認可を受けたのは6月。販売が9月と、極めて素早く商品化ができました。

 

下屋敷縁氏
下屋敷縁氏

 

  通常は新規商品の認可には、半年から1年はかかります。今回は金融庁も、「商品上の対応を行う場合には、最優先事項として迅速な対応を行う」という積極的なスタンスでしたので、非常に早く進みました。同庁との交渉も、コロナの影響で役所には訪問できず、ほとんど電話でやりとりしました。4月、5月は緊急事態宣言が出ている最中でしたので。

 

――他社の追随はどうですか。

 

 下屋敷氏:指定感染症の指定は、通常だと1年です。従って、当初は、今年の1月にはコロナは指定感染症の指定からはずれるとみられていました。ところが、感染が長引き、もう1年延ばすことになりました。本来1年で終わりになるのではとの予想等があったので、わが社の場合も、9月に販売開始して半年くらいで、新型コロナウイルス感染は倍額保障の入院一時金の対象から外れる可能性もありました。

 

 しかし、コロナ禍の影響を踏まえて、早くやらないと意味ないので、われわれは(半年の商品性であったとしても)決断しました。当初、他社が追随しなかったのは、恐らく準備して商品を開発しても、多分、コロナ禍が終わってしまうと、商品性の魅力を発揮できなくなる可能性もあったので、出されなかったのではないでしょうか。今回、指定が1年延び、来年1月まで商品需要が延びた形になったので、もしかしたら他社も追随されるかもしれません。われわれは、スピード優先でやってきました。

 

――販売実績はどうですか。

 

 下屋敷氏:9月の販売開始後13日で契約件数は1万件、昨年12月21日で5万件を達成しました。年が明けてからも感染者が増えているので、1月以降も契約者は増加基調にあります。新保険商品としては、非常に好調な売れ行きになっています。

 

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――5万件のうち新規契約者と既存契約者の追加付与との割合はどうですか。

 

 下屋敷氏:まったくの新規の契約は全体の2~3割ぐらいと思います。基本は、既契約者の方への上乗せ契約を推進してきました。ただ、若い人は、インターネットで直接申し込むケースも増え、新規契約は今までより増えました。ネット申し込みの場合は100%新規ですね。私どものお客様は、大体、40代以上の女性が多いのですが、今回のいわゆる「コロナ保険」の場合、20代、30代の男性がかなり新規契約されています。若い男性のほうがコロナに対して危険を感じているようですね。

 

――保険の対象は、PCRなどの検査費用もカバーするのですか。

 

 下屋敷氏:この保険自体は定額保険です。入院一時金保険は通常だと、最高20万円が一時金となります。PCR検査等で、陽性反応が出ると、さらに20万円が支払われて合計40万円が出ます。陽性者が自宅待機の場合でも、入院扱いで支払っています。つまり、検査で陽性と判断された段階で基本的には入院一時金を支払うことになります。

 
――実際に保険販売後に、被保険者の方が陽性と判断されて保険金を支払ったケースはありますか。

 

 下屋敷氏:まだそれほどありません。コロナ関連での入院費用を支払った事例は当該商品からはまだ100件以下の状況です。ただ家族4人で感染し、4人とも保険金を給付したケースもあります。しかし、全体ではまだ保険金の支払い額はそれほど大きくはなっていません。契約者や被保険者の方も保険任せではなく、慎重にコロナ対応をしているためだと思います。

 

――今後、コロナ関係で他の保険商品の新規開発の計画はありますか。

 

 下屋敷氏:現在は特にありませんが、入院保障ということでは、団体保険を検討する可能性はありますね。たとえば、タクシー会社が運転手全員に保険をかけたいとか、あるいは病院の方に全員入っていただいた事例もあります。そういう企業向けのニーズを考える必要はあると思います。

 

――資金運用面ではグリーンローン等に力を入れておられますね。

 

 本田氏:2007年にPRIに署名して以来、ESGを意識した取り組みを進めてきました。会社としての規模もありますので、当社では、一気に大きくやるよりも、各種取り組みを着実に積み上げていくことを心掛けています。ESG投融資への取り組みは、大きく分けると2種類です。一つは、企業の株式や債券等への通常の投融資の中で、どのようにESGを考えていくかという点。もう一つは、グリーンローンやコロナワクチンボンドをはじめとする、ESGのテーマを持った投融資を実施するという点です。

 

本田氏
本田孝宏氏

 

 前者については、まず投融資の入り口段階で、ネガティブスクリーニングをかけます。例えば、非人道的兵器を製造している企業への直接投融資は原則行わないとか、石炭火力発電事業への新規投融資は原則禁止するなどです。そうしたスクリーニングをかけたうえで、ESGインテグレーション(ESG要因を組み込む)として、対象企業がどのようなESG活動に取り組み、どのように社会に評価されているのかという観点で確認を行い、投融資判断の際の評価に加えています。通常の投融資の中にそうした評価を組み込み、株式や債券等の有価証券、不動産および貸付等の投融資を実施しています。

 

 もう一つは、グリーンローンやコロナワクチンボンド等のESGテーマ投融資への取り組みです。私どもの投資資金は、保険契約者からお預かりしている資金ですので、通常の運用利回りを下回るような案件への投融資は難しいと考えていますが、きちんと利回りを確保できるという前提の中で、積極的にESG投融資を進めています。現在のテーマ型投融資は、累計実績で2300億円程度になりました。

 

――前者の企業への株・債券投資の対象は保有全資産ですか。

 

 本田氏:そうです。企業向けの投融資の全資産が対象です。企業向けの株式や社債に加えて、不動産への投資の場合もESGの観点からグリーンビルディングを選別するなどの活動を進めています。企業向けの投融資以外にもESG評価の対象とする動きもあると認識していますが、今後の努力目標として検討を進めていきたいと考えています。

 

――外債も対象ですか。

 

 本田氏:基本的にはそうですが、私どもは、海外の企業への投資はファンドを通じて行っていますので、実績としては、明確に示せないのが実情です。外国債券における今後の課題としては、外国の国債をどのように評価していくかという点ですね。ESG投融資は流行りではなく、長くきちんと続けていくことが大事と思っていますので、引き続きESG投融資の推進・高度化に向けて、着実に取り組んでいきます。

                          (聞き手は 藤井良広)