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アジアの石炭火力発電事業の保険引き受け、日本の3大損保会社が主導。特にベトナムのブンアン2事業で。「保険引き受け・投融資停止方針」の『抜け穴』利用と、環境NGOは批判(RIEF)

2022-06-09 17:52:02

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 石炭火力発電事業への保険引き受け業務から欧米の大手保険会社の撤退が相次ぐ中で、日本の東京海上等の3メガ損保がベトナムのブンアン2石炭火力等の4事業に対して保険引き受けを主導していることが、環境NGOの国際ネットワーク「Insure Our Futureキャンペーン」と、韓国の環境NGO「Solutions for Our Climate (SFOC)」の発表で指摘された。NGOは「海外の主要な保険会社が石炭事業の引き受けから撤退する中で、日本の保険会社が最後の引受者になっている」と指摘している。

 

 NGOの調査は、韓国の国会議員を通じて入手したデータ等から、韓国電力公社(KEPO)が関与した5つの石炭火力事業のうち、フィリピンのセブ・ナガ石炭火力、ベトナムのギソン2石炭火力、ブンアン2石炭火力、インドネシアのジャワ9・10石炭火力の保険引き受け状況を調べた。

 

 その結果、日本のMS&AD、東京海上、SOMPOの3社は対象事業の全部あるいは、5事業のうちのいずれかの保険を引き受けてたことがわかったという。このうち、MS&ADは4事業で、東京海上とSOMPOは3事業で引き受けていたとしている。

 

 これらのアジアでの石炭火力事業のうち、現地で今も反対運動が続いているベトナムのブンアン2では、MS&ADが12億1600万㌦、東京海上5億6900万㌦、SOMPO2億3800万㌦の引き受け規模。3社の引受総額は、ブンアン2の全体引受額の約46%を占めており、日本の損保主導での引き受けであることがわかる。

 

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 環境NGOによると、ブンアン2の保険契約は、2021年10月に開始されている。最も契約額の多いMS&ADの場合、同年6月に「今後計画される石炭火力発電所の保険引受や投融資を行わない」との「石炭に関する方針」強化を発表した直後だった。MS&ADは、新方針はすでに交渉段階に入っている事業には適用されないとの立場をとっているという。

 

 この説明に対し、NGOは「新方針発表の事前に『抜け穴』を用意していたことが表面化した」と非難している。東京海上も2021年9月に、SOMPOは2020年9月に、それぞれ原則として石炭火力発電事業への新規引受は行わないと表明していた。しかし、いずれの各社も、2021年10月からブンアン2の保険契約を行っていたという。

 

 NGOは、日本のメガ損保3社は、石炭火力事業の新規保険引受と投融資の停止を表明しているが、既存の石炭火力事業の保険契約を段階的に縮小する目標は設定していないほか、石油・ガス事業でも包括的な引受停止方針がないなどの点で、脱炭素の対応では、欧州の保険会社に大きく遅れをとっていると指摘している。「1.5℃」目標と保険事業の整合性を図るために、これらの方針を早急に掲げるべきだ、と求めている。

 

 報告書では、国際的に石炭火力向け等の保険引き受けの見直しが遅れている保険会社として、日本勢のほかに、英ロイズ保険組合の専門保険会社、スター(アメリカ)、 リバティ・ミューチュアル(アメリカ)、バークシャー・ハサウェイ(アメリカ)、アライド・ワールド (バミューダ)、ハノーバー再保険、QBE、ヘルべティア、スコール再保険等を名指ししている。

 

http://jacses.org/1773/

http://jacses.org/wp_jp/wp-content/uploads/2022/06/kepcoreportjp.pdf