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東京海上日動が主導する形で、大手損保4社による企業向け共同保険での保険料事前調整が発覚。対象となった東急が「見抜く」。損保寡占体制の弊害を露呈(RIEF)

2023-06-20 18:51:09

Tokaiキャプチャ

 

 東京海上日動火災保険は20日、同社を含む複数の損保会社による共同保険契約で、企業に対して保険料調整を行ったとして金融庁に不祥事件届出を行い、金融庁から報告徴求命令を受けたと発表した。対象となった企業は、私鉄グループの東急。東京海上の社員が主導して、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の各社と、保険料入札に際して、共同で高い保険料を提示したという。東急側が保険料の高さに疑問を抱き、入札をやり直す経緯で発覚した。

 

 保険料での価格調整については、日本経済新聞が報道した。報道を受ける形で、東京海上は「昨年12月20日、当社社員が主導した『保険料の調整行為』が行われた。 本共同保険契約は、顧客の意向で複数の損保による入札となった損害保険契約で、顧客企業が入札時に各損保から提示された保険料水準に疑念を持ったため、入札自体をやり直して再度入札を行った」と説明している。

 

 入札のやり直しという経緯を経たことで、「結果的には保険料の調整行為による不当な保険料で引き受けに至ることはなかった」としたうえで、金融庁に対して不適切な営業行為として不祥事件届出を行い、同庁より保険業法に基づく報告徴求命令を受けたとしている。

 

 企業向けの保険料は、対象となる企業のこれまでの保険契約で支払ってきた保険金の実績(損害率)などを踏まえて決めるのが一般的。ただ大企業向けの火災保険等の場合は、保険規模が大きく、引き受けリスクも高まることから、損保各社が分担して引き受ける共同保険契約とすることが多いという。東急の場合の損害率は3割弱とされ、「優良企業」と評価される水準だった。

 

 しかし、報道によると、同社に対して、入札で保険各社が示した保険料は割高で、かつほぼ横並びの水準だったという。東急は損保各社の入札保険料額が実態より高かったことに疑問を抱き、再入札を求めた。ところが再入札で示された保険料は、今度は逆に実勢よりも割安な保険料になったという。

 

 このため、同社が東京海上の担当営業部門と話し合を求めたことで、不適切な行為があったことを東京海上側も認識。外部弁護士を起用して担当者のメールや携帯電話の履歴等の解析を行って確認したうえで、3月24日時点で、金融庁に報告したとしている。東京海上は「本事案は(事前に発覚したことで)結果的に保険料の調整行為による不当な保険料で引受に至っていないが、今後、公正取引委員会にも報告する」としている。

 

 現在の国内の損保業界は、今回の共同保険契約に関係した大手4社で、企業向け保険の90%以上を占める寡占体制となっている。企業の保険引き受けに際して、もっとも取引が深い損保が主幹事の役割を果たして、他社に共同保険への参加を求める形で、市場配分を続けてきたとみられる。

 

 金融業態の寡占体制は、損保だけでなく、大手銀行も3メガバンクが企業取引の高い割合を占めるほか、証券会社も同様だ。金融危機時に金融当局が合従連衡を後押しした事情もある。今回の事例は、常態化していたとみられる損保各社間での共同保険契約の事前調整体制を、企業側が見抜いた形だ。損保各社を監督する立場の金融庁のチェック機能も、十分に働かなかったことになる。

 

 金融庁は損保各社に対する調査に加えて、寡占下の金融機関の監督対応を改めて見直す必要があるだろう。

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