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独環境NGOが、保険会社の石炭関連事業向け保険引き受けと、投融資引き揚げ取り組みでスコアランキング開示。上位2社はスイス勢。日本の3損保はそろって下位低迷(RIEF)

2019-12-02 23:13:50

coalInsurance3キャプチャ

 

  ドイツの環境NGO「The Unfriend Coal」は、温暖化の元凶である石炭関連事業への保険会社の保険引き受け、投融資の取り組み状況をまとめた。石炭事業への保険引き受けをゼロまたは限定する保険会社は2017年の3社から19年は17社に増えた。保険引き受け市場の9.5%、再保険市場の46.6%に達した。ただ、その多くは欧州の保険会社で、日本の3損保は大手30社対象のランキングで、下位に甘んじている。

 

 Unfriend Coalが定期的に実施している「第3回保険・石炭・気候変動に関するスコアカード」調査に基づく。

 

 保険会社は企業の保険需要を引き受けるほか、機関投資家として資金運用も展開する。一方で温暖化の進行で自然災害の増大化が進むと、保険会社は保険金支払額が増大、収益にも影響する。17、18年の両年のグローバルな自然災害コストは5100億㌦。このうち保険損害対象は2200億㌦。年平均1100億㌦だ。過去30年の平均(インフレ調整後)は410億㌦だから、2.7倍増だ。

 

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 温暖化の加速による保険損害増加のかなりの部分が、石炭関連事業からもたらされているとすれば、保険会社が同事業からの保険引き受けや、投融資で得る収益を上回る損害を、同事業の活動から受けている可能性もある。

 

 こうしたことから、2017年に、保険引き受けの対象から石炭関連事業の除外を3社の保険会社が宣言した。これを皮切りに、昨年は4社が宣言に追加。今年11月までに10社が加わり、合計17社に増えている。

 

 石炭関連事業からの投融資の引き揚げ(Divestment)は、100億㌦以上の資産を保有する少なくとも35の保険会社が石炭関連事業を投融資引き揚げ対象としている。その総額は8兆9000億㌦(約970兆円)、保険会社のグローバル資産の約37%分に拡大している。

 

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 Unfriend Coalは、大手保険会社が石炭関連事業にどう対応しているかを、各地の環境NGOと協力してスコアで評価、比較できるようにした。評価は、①石炭事業からの保険引き受け②石炭事業への投融資③その他の気候リーダーシップの3部門についてはじいた。

 

 その結果、①②の両部門で1位となったのはスイスの再保険会社、スイス・リ社。2位は①で2位、②で3位のチューリッヒ保険。スイスの2社が1、2位を占めた。3位はフランスのAXA、4位に米国のAXIS Capital、5位にイタリアのGeneraliと続く。英Legal & General は①②では目立たないが、③で1位となった。投資家として石炭関連事業に気候活動の推進を積極的に展開したためという。

 

 日本の東京海上ホールディングス、SOMPOジャパン、MS&ADインシュアランスホールディングスの3損保は、ともに16位。いずれもスコアは①も②もゼロ点。わずかに③部門での微差で前後の違いがついた。16位は10社以上が横並びで、30社ランキングの事実上最下位に相当する。

 

 過去2回のスコアランキングでは、上位10社はほとんど欧州の保険会社だった。だが、今年3月以降、米社2社、豪社1社がランク入りするなど、グローバルに広がりを見せ始めている。中国のPing An(平安保険)も15位にランクされ、日本の損保を上回った。

 

石炭関連事業に対する保険引き受けの状況
石炭関連事業に対する保険引き受けの状況

 

 これらの保険会社が保険引き受け、投融資両面で石炭関連事業から距離を置く動きが広がっていることから、石炭事業会社向けの保険市場は縮小、保険料は増大している。保険コンサル「Willis Towers Watson」によると、石炭火力発電事業のコストアップが進み、再生可能エネルギー事業との競争上、不利な傾向が加速している、と分析している。

 

   調査結果を踏まえ、Unfriend Coalはすべての保険会社に向けた勧告を次のように示している。

 

 ①石炭とタールサンド事業の保険引き受けを直ちに停止する(彼らがクリーンエネルギーへの迅速な移行を約束しない限り)

 

 ②石炭やタールサンドの掘削・輸送に関する企業向けの投資引き揚げを直ちに始める。Divestmentは保険会社自身の資産だけでなく、第三者からの資産運用も含む

 

 ③すべての保険会社のビジネスを「1.5℃目標」と整合させる。2050年までに地球上のすべての化石燃料産業をクリーンエネルギー事業・企業に移行させる

 

 ④パリ協定の目標と整合するよう、業界団体として、株主として、企業市民として、スチュワードシップ活動を推進する

 

https://unfriendcoal.com/wp-content/uploads/2019/11/2019-Coal-Insurance-Scorecard-soft-version.pdf