HOME8.温暖化・気候変動 |大手損保各社。火災保険の10年契約廃止へ。最長5年に短縮。温暖化の加速による台風等自然災害増大で収支悪化が原因。保険料見直しを弾力化。年内にも実施へ(各紙) |

大手損保各社。火災保険の10年契約廃止へ。最長5年に短縮。温暖化の加速による台風等自然災害増大で収支悪化が原因。保険料見直しを弾力化。年内にも実施へ(各紙)

2020-02-23 19:00:05

sonpo1キャプチャ

 各紙の報道によると、大手の損害保険会社は、現在、消費者に提供している10年契約の火災保険を廃止し、最長で5年契約とする方針という。最近の台風や大雨などの災害の多発で、保険金の支払い額が巨額に上り、保険会社の収支が悪化しているため。契約期間を短くすることで、保険金の支払い状況に応じて保険料の値上げをし易くする狙いがあるとしている。

 NHKが伝えた。個人向け火災保険は、火災のほか、台風や大雨、洪水などの自然災害による住宅や家財の被害を補償対象としている。契約期間は、以前は最長で36年契約の火災保険があったというが、2015年10月以降は、10年契約が最も期間が長い。同契約の場合、契約者が支払う保険料は、10年の契約期間中に、どれくらいの割合で災害が発生するかを推計して決定している。


 ところが、最近は、毎年のように大型台風や集中豪雨等による大雨、洪水、がけ崩れによる家屋の損壊等の被害が全国的に広がっている。このため保険会社が保険契約者の被害時に支払う保険金の総額は、2018年度に過去最高の約1兆6600億円、2019年度も、台風被害が相次いだため同様に1兆円を超える見込みとなっている。

台風19号の被害は甚大だった
台風19号の被害は甚大だった

 保険金支払いの増大は、保険会社の収支悪化に直結する。保険各社は収支改善のため、保険料を引き上げる対策を実施している。大手各社は昨年10月に全国平均6~7%の値上げを実施したほか、さらに来年1月にも追加値上げすることが決まっている。しかし、値上げだけでは十分に収支を改善できないほか、今後、温暖化の進行で災害支払いの増大が不透明になっていることから、長期の契約期間をできるだけ止める方向に転換する考えだ。

 すでに、東京海上日動、三井住友海上、損保ジャパン日本興亜、あいおいニッセイ同和損保の大手4社がそろって、10年契約の保険を廃止し、5年契約を最長とする方針を定めているという。
今後、議論と調整を進めるなどして、早ければ年内にも見直しを決定するとしている。

 契約期間を短くすれば、直近の自然災害の発生状況や保険金の支払い額をもとに契約者が負担する保険料を変更しやすくできる。契約者にとっても、災害等での発生が少なければ、10年を待たず、5年で実質的な保険金支払額を加味した保険料に修正できる利点もあるが、直近の気候変動の激化の状況を踏まえると、そういうケースは想定し難く、契約者は5年ごとに契約を更新するたびに保険料の値上げに直面する可能性が高い。

台風被害で大きな打撃を受けた住宅
台風被害で大きな打撃を受けた住宅

 温暖化の進展と気候変動の激化によって、損害保険会社は保険商品の設計を変更せざるを得ない状況になっているわけだ。企業経営としてはやむを得ないともいえる。ただ、欧米の保険会社等は、保険金支払いの原因である自然災害の頻発・増大化という温暖化の要因を作り出している石炭火力発電事業等を抑制するため、一定の化石燃料関連ビジネスから収入を得ている企業向けの保険引き受けを停止するなどの動きを強めている。

 

 日本の損保各社も、保険料値上げ、契約期間短縮といった契約者向け対策だけにとどまらず、リスクを増長している企業向け契約の見直し、あるいはエンゲージメント活動の展開にも踏み込むべきだろう。そうした保険会社との契約を求めている消費者も増大しているはずだ。