HOME10.電力・エネルギー |京セラ、九電工等の企業連合、「長崎・宇久島」での国内最大級の480MWの太陽光発電事業へ出資500億円決める。今年度中に着工。鹿児島の「鹿屋大崎」事業の約5倍の規模(RIEF) |

京セラ、九電工等の企業連合、「長崎・宇久島」での国内最大級の480MWの太陽光発電事業へ出資500億円決める。今年度中に着工。鹿児島の「鹿屋大崎」事業の約5倍の規模(RIEF)

2020-04-28 22:56:11

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 京セラ、九電工、東京センチュリー等の各社は、鹿児島県で100MWの太陽光発電事業を稼働させたことに続いて、長崎県佐世保市の五島列島で計画中の、国内最大規模の約480MWの発電容量を持つ太陽光発電事業に約500億円を出資する契約を結んだと発表した。同発電所は営農併営型で、発電した電力を海底ケーブルで本土に送電するなど、スケールの大きいプロジェクトで、投資総額は2000億円になる見通し。

 

 (写真は、営農併営型太陽光発電所のイメージ=旧事業主体PVDP社の構想)

 

 動き出す大規模太陽光発電所は、五島列島の宇久島に設置される。同島では、2017年12月に「宇久島みらいエネルギーホールディングス合同会社」が立ち上げられ、これまで事業化の準備を進めてきた。京セラ、九電工、東京センチュリーに加えて、タイ企業で日本でも再エネ事業を展開するSPCG Public Company Limited(SPCG)、古河電気工業、坪井工業の3社を加えた6社でチームを結成、このほど出資を決めた。

 

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 事業は2020年度から建設工事に着手する。京セラ製の太陽電池モジュール約480MW分を設置し、年間発電電力量は約51.5万MWh(一般家庭で約17万3000世帯分の年間電力消費量)となる予定。地元での農業活動と協調して営農併設型(畜産業)とする。完成は2023年度中を目指す。発電した電力は宇久島と本土との間に約64kmの海底ケーブルを敷設し、九州電力に売電する予定。

 

 発電規模は同じ28日に売電開始を発表した鹿児島県の「鹿屋大崎ソーラーヒルズ太陽光発電所」の4.8倍という国内最大規模のスケールだ。

 

 宇久島での太陽光発電の潜在力は早くから注目されていた。すでに2013年には事業計画が打ち上げられた。当初は、ドイツのフォトボルト・デベロップメント・パートナーズ社(PVDP)が京セラ、九電工のほか、オリックス、みずほ銀行と合同で提案、計画した。ただ土地を持つ農家等の調整等で時間がかかったほか、発電した電力の送電用の海底ケーブルの敷設をめぐっても時間がかかった。https://rief-jp.org/ct1/44521?ctid=67

 

豊かな自然が広がる宇久島。「平家落ち武者」の伝説もある
豊かな自然が広がる宇久島。「平家落ち武者」の伝説もある

 

 またこの間、2016年には、事業に関連して佐世保市長に現金を渡そうとしたとして、佐世保市議が逮捕され有罪判決を受ける事件も起きている。人口約2000人の島だが、島の面積2493㎡の約4分の1に当たる約630万㎡にソーラーパネルを敷き詰める計画に、「島中が埋め尽くされる」との不安を持つ住民もいまだに少なくないようだ。

 

 その後、2018年になって、事業主体をPVDPから、日本勢とタイの SPCGなどが設立したSPCの「宇久島みらいエネルギーホールディングス合同会社」に移管させた。SPCには、古河電工、坪井工業等も出資。当初参加していたオリックスは撤退するなどし、体制を一新した。http://rief-jp.org/ct1/76231

 

 そうした見直しと調整作業を経て、今回、企業連合が総事業費の4分の1に相当する約500億円をSPCに出資することを決めたわけだ。ファイナンスが動き出したことで、事業は計画段階から建設段階へと移行する。

 

 発電した電力は、FITを使って九州電力に1kW時当たり40円で20年間にわたって販売されるとしている。構想から着工までに時間がかかったが、当初事業を推進したPVDPが、早い段階で九州電力に系統連系工事の着工申し込みを済ませていたため、40円の売電価格で販売できるという。

 

 いくつかもの紆余曲折を経て、ようやく動き出す宇久島事業。事業を推進してきた長崎県、佐世保市による行政主導のプロジェクトにもかかわらず、環境影響評価も十分に実施しないままであるなどの点に、今も懸念を示す向きもいるようだ。今後、順調に進むとしても、計画から完成・売電までに10年を費やすことになる。事業主体の企業連合にとっては、稼働後の事業の安定が最大のポイントになる。地元の信頼と、安定した電力の供給を心がけてもらいたい。

https://www.kyocera.co.jp/news/2020/0404_kfje.html

https://ssl4.eir-parts.net/doc/8439/tdnet/1820106/00.pdf

https://www.kyudenko.co.jp/press/65d613a3e68a502098c857daafe983e8.pdf