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NTTグループ、電力事業参入で三菱商事と協業。昨年打ち上げた「スマートエネルギー構想」による送配電網事業への参入に踏み出す。コンビニのローソンの店舗に直接電力供給へ(RIEF)

2020-06-30 21:58:31

NTT001キャプチャ

 

  NTTグループは30日、傘下のNTTアノードエナジーを通じて、三菱商事とのエネルギー分野での協業として①再生可能エネルギー発電事業②EVや蓄電池を組み合わせたエネルギーマネジメント事業に、取り組むと発表した。再エネの発電事業に加えて送配電事業にも取り組む。送配電事業はNTTの通信網を活用、全国展開する。第一号として三菱商事傘下のコンビニのローソンの全国店舗への電力供給を検討中という。送配電事業に既存電力会社以外の事業者が本格参入するのは初めてだ。

 

  NTT は昨年3月、再エネ事業のほか、送配電事業などをグループ全体で取り組む「スマートエネルギー事業」構想を打ち出した。全国に展開する通信局舎や施設と、全国に張り巡らした通信網を活用して、既存電力会社に依存しない「独立系電力会社」を目指す戦略だ。NTTアノードエナジーは同構想に基づき、昨年6月に設立された。http://rief-jp.org/ct4/88434

 

 同社は、NTT グループの保有するICT技術・直流給電技術を活用したスマートエネルギー事業を推進する事業推進会社で、NTTの電力事業の中核部隊。NTTは単に、既存電力と同じような発電・送配電事業を展開するのではなく、再エネとデジタル技術を組み合わせたスマートエネルギーの提供を目指しており、三菱商事が蓄積する電力事業の知見と連携することにしたとみられる。

 

NTT002キャプチャ

 

 三菱商事は、すでに電力供給事業を展開するだけでなく、需給調整サービスなども展開している。さらに蓄電分野では、車載用・産業用リチウムイオン蓄電池の製造・販売事業、車載用蓄電池のリユース、エネルギー分野での利活用を推進している。両社は、NTTのネットワークと、三菱商事の経験・ノウハウの組み合わせで、従来の電力会社にはないエネルギー供給が可能と判断したとみられる。

 

 NTTは全国の電話局や通信施設等に、再エネの受け皿となる蓄電池を配備し、自前の太陽光発電や、洋上風力発電と連動させて、発電容量を現在の30万kWから25倍の750万kWに増強する。日本全体の再エネ発電量の約1割を占める。NTTが計画通りに750万kWの再エネ発電を新規に立ち上げると、政府が掲げている2030年の再エネ比率22~24%目標の達成可能性が高まる。

 

 投資資金は2025年までに年間1000億円程度を投資し続け、30年度までに累計1兆円強を想定している。ただ報道によると、洋上風力発電の場合、現在の建設費用は10万kWの設備で1000億円程度とされる。750万kWの4割を洋上風力で賄う場合、3兆円規模の投資資金が必要になる。こうした膨大な資金調達のためにグリーンボンド市場の拡大が期待される。

 

 NTTの計画によると、発電容量は現在の四国電力1社分を上回る規模となる。既存の電力会社は各地域に集中型だが、NTTの場合は全国展開で、発電は自前の施設整備地域が中心となり、電力供給対象は電力需要の大きい顧客向けとなる見通しで、電力ビジネスとしての効率性を高める期待がある。さらに、自前の送配電網の整備が進むと、他の新電力等の電力を送配する役割も果たせるので、送配電市場に競争原理を導入することで、日本の電力市場全体のレジリエンスの強化、価格引き下げ等も期待される。

 

 NTTグループ自身の電力使用量は現在、日本全体の約1%。そのうち再エネ比率は4.5%だが、自前の発送配電網の整備で2030年度には30%強に引き上げる計画という。

 

https://www.ntt-ae.co.jp/pdf/press20200630.pdf