HOME10.電力・エネルギー |ドイツ議会、2038年までに石炭火力発電全廃法案を可決。22年末には脱原発。G7唯一の「脱原発・脱石炭」国に。日本政府の「USC維持・原発再稼働促進策」とは対照的(RIEF) |

ドイツ議会、2038年までに石炭火力発電全廃法案を可決。22年末には脱原発。G7唯一の「脱原発・脱石炭」国に。日本政府の「USC維持・原発再稼働促進策」とは対照的(RIEF)

2020-07-04 21:49:59

Coal002キャプチャ

 ドイツ連邦議会は3日、上下院両議会で、2038年までに国内の石炭火力発電所を全廃する脱石炭法案を可決、同法は成立した。同国はCO2排出量が多い褐炭の世界最大の産出国で、昨年の発電量の約30%は褐炭と石炭に由来している。褐炭、石炭生産地域の再生・移行に総額4000億ユーロ(約48兆円)を投じる。ドイツは22年末までに原発稼働を全廃する予定で、先進7カ国(G7)諸国の中で、脱原発、脱石炭の両方を実現する唯一の国になる。

 ドイツ経済大臣のPeter Altmaier氏は「ドイツの化石燃料時代は、今回の決定で、最終的に終わりを迎える」と強調した。脱石炭法は、同国の「エネルギー移行(トランジション)政策」の一環。4000億ユーロの資金は、石炭火力等を閉鎖する電力会社への補償のほか、石炭・褐炭の生産が中心のノルトライン・ウエストファリアのほか、ザクセン、ザクセン・アンハルトの各州の構造改革と雇用者対策に充当される。

  ドイツの政府系シンクタンクのフラウンホーファー研究機構によると、今年のドイツの発電に占める石炭比率はほぼ20%に下がり、原発と天然ガスはそれぞれ12%。再エネ発電の比率は、過半を上回る55.7%になる。太陽光、風力、バイオマス、水力の合計だ。

 日本の経産省は3日、旧式の石炭火力発電を100基廃止する一方で、超々臨界圧石炭火力は40基以上を維持する「石炭火力維持策」を改めて強調。結果的に原発再稼働も促進するという、石炭・原発維持の微調整策を示した。従来型エネルギー依存を変えられない日本と、重荷を背負いながら、確実にエネルギー転換を目指すドイツの「政策力」の違いが鮮明になっている。

 ただ、こうしたドイツの「脱石炭」路線も、国内外では賛否両論が引き続き出ている。環境団体等は、2038年までのロードマップでは、パリ協定が定める目標に合致するには程遠いと指摘する。グリーンピース等は連邦議会の前で抗議行動を展開した。

 

 グリーンピースドイツ代表のMartin Kaiser氏は「ドイツは大量の褐炭を今後も18年間も燃焼することになり、次世代に重い負担を課し続ける。今回の決定は歴史的な間違い。廃止は2030年までに前倒しすべき」と批判している。

 

 一方で、財政重視者からは、4000億ユーロの補助金を石炭関連事業者や自治体に配分することはEUの政府補助金規制に抵触するとの指摘もある。野党の自由民主党(FDP)のKatja Suding氏は「政府は石炭事業者に補助金を配分するより、現行のカーボン排出権取引制度を拡大活用して、カーボンに価格付けして不採算な石炭火力閉鎖を進めるべき」と市場型の政策調整を求めている。

 

 環境相の Svenja Schulze氏は「政府は石炭事業の廃止を推進するため、毎年、事業レビューを続け、後押しする。2022年末までに8基の石炭火力発電所を閉鎖する」と述べている。ドイツはすでに2018年までに鉄鋼用の瀝青炭の炭鉱廃止を決めているが、西部および東部地域でもっとも多く産出する褐炭産出地域での雇用対策等の調整に時間がかかっていた。褐炭地域は炭鉱跡地を自然に再生し、リゾート地などに転じる計画という。

 

 ドイツの鉱山労組代表のMichael Vassiliadis氏は大歓迎だ。「歴史的な偉業。ドイツ政府は次は再生可能エネルギー発電と水素開発を加速すべきだ。それらは天然ガスの長期代替エネルギーとなるだろう」と述べ、ドイツのエネルギー転換の促進を求めている。(RIEF)

 

https://www.dw.com/en/germany-approves-coal-phaseout-by-2038/a-54040605

https://abcnews.go.com/International/wireStory/germany-finalizing-plan-phase-coal-energy-71591216