HOME |台風や集中豪雨による東京都心の投資不動産(J-REIT)の浸水リスク、荒川流域外でも2割の物件で浸水50cm以上。3m以上14件。目黒川流域が危険地域。三井住友トラスト基礎研が分析(RIEF) |

台風や集中豪雨による東京都心の投資不動産(J-REIT)の浸水リスク、荒川流域外でも2割の物件で浸水50cm以上。3m以上14件。目黒川流域が危険地域。三井住友トラスト基礎研が分析(RIEF)

2020-08-03 18:15:06

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 大型台風やゲリラ豪雨等による浸水被害が全国的に発生している。都市部の不動産投資物件も気候変動リスクの影響を無視できない状況にある。三井住友トラスト基礎研究所の最新報告によると、東京都内でのマンション、物流施設等のJ-REIT(不動産投資信託)物件の約2割が浸水深50cm以上の床上浸水リスクの高い地域に立地し、そのうち14物件は浸水深300cm以上の危険地域にあることがわかった。

 

 報告書は同研究所・私募投資顧問部主任研究員の菊池暁氏が執筆した。投資不動産が集中する東京都のJ-REIT保有物件の浸水リスクを把握するため、今年5月末までにJ-REITが都内で取得した2098物件を対象にして、東京都建設局の「浸水予想区域図」データと、地理情報システム(GIS)による物件プロットがマッチした1589件の浸水深別分布状況を整理した。

 

品川区・目黒区の浸水深200cm以上の地域のJ-REIT保有物件。赤が300cm以上、黄色が200~300cm
品川区・目黒区の浸水深200cm以上の地域のJ-REIT保有物件。赤が300cm以上、黄色が200~300cm

 

 その結果、1589件のうち、約2割(19.6%)に相当する312件が床上浸水リスクエリアに立地していた。このうち23区内で浸水深が300cm(3m)以上となったのは、品川区西五反田で10件、同区東五反田1件、目黒区下目黒2件だった。同地域には目黒川が流れており、過去にも1989年、99年に浸水が発生している。

 

 これら浸水深300cmエリアの背後には、浸水深200cm以上300cm未満のREIT保有物件が合計21件存在している。同地域以外では、200cm~300cm地域に所在する物件が、港区(8件)、新宿区(9件)、渋谷区(13件)となっている。

 

  今回の報告書の対象には、東京都東部エリア(墨田、江東、荒川、葛飾、江戸川の各区)は含まれていない。同エリアでは、浸水深300cm以上の地域が広い範囲にわたり、一部では浸水深10mに達するところがある。ただ、荒川河川流域が国管理であるため、東京都の浸水予想区域図の対象外になるためという。都内のRIET物件の24.3%が東部エリアに所在しており、これらの浸水深被害を加えると、都内の「危険REIT物件」数は増大する。

 

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 報告書は、TCFDの提言を受けて、機関投資家が気候変動が企業補財務に与える影響評価を求める動きが高まっている点を指摘。これらのJ-REITの不動産投資物件についても、定量的な被害想定額の推計の必要性を指摘している。

 

 被害額の推計方法として、浸水深と地盤勾配を元に算出する方法が示されている。例えば浸水深300cm、地盤勾配0.865の場合で、地上14階建てマンション、延べ床面積5000㎡、取得価格30億円で、建物評価額をベースにすると被害額13億円となる。これに発生確率を加味する必要がある。また浸水リスクは、テナントビルなどの場合、建物の毀損リスクに加えて、テナントの事業停止・退去に伴う減収や保険料増加なども考慮する必要があると指摘している。

 

 J-REITは保有物件についての気候財務情報として、浸水リスクの程度と、被害推計額を開示する必要がある。

 

https://www.smtri.jp/report_column/report/pdf/report_20200803.pdf