HOME10.電力・エネルギー |リコー、ブロックチェーンを使った再エネ電力取引管理システム開発。自社で実証実験を開始。小売電力事業者向けにプラットフォームとして提供。我が国の再エネ市場拡大を視野に(RIEF) |

リコー、ブロックチェーンを使った再エネ電力取引管理システム開発。自社で実証実験を開始。小売電力事業者向けにプラットフォームとして提供。我が国の再エネ市場拡大を視野に(RIEF)

2020-08-21 14:14:58

Ricoh002キャプチャ

リコーは、再生可能エネルギー発電を促進するため、ブロックチェーン技術を使って再エネ電力を発電から消費までをリアルタイムで把握できる電力取引管理システムを開発、自社の拠点での実証実験を開始した。リコーは小売事業者が参加しやすいプラットフォームとして市場に提供することで、再エネ電力の需要家が同電力を調達しやすくなり、再エネ市場が拡大すると見込んでいる。

 実証実験では、リコーリースの発電施設が発電した再エネ由来の電力を、神奈川県海老名市の「RICOH Future House」と静岡県御殿場市の「リコー環境事業開発センター」に送電する。貸しオフィスなどを運営する「Future House 」では、時間帯によって再エネ100%の電力を使うことができる。

 「環境事業開発センター」はリサイクル事業が中心だが、日中の使用電力量の5~6割を再エネ電力で賄えるという。実証実験では、リコーが開発したブロックチェーンの機能を使って、電気を発電から消費まで常時トラッキングできる管理システムを利用する。

Ricoh001ャプチャ

 同システムは、各再エネの発電拠点、消費拠点に設置した計測装置で、各拠点での発電量と消費量をリアルタイムに把握したうえで、ブロックチェーン技術を活用して拠点間の発電量の過不足を可視化できる。天候等に左右される再エネ電力のリスクが分散され、再エネ電力の安定供給が可能になる。

 ブロックチェーン技術の活用で、発電量や消費量は改竄されることなく第三者が検証可能な形で記録される。このため、データの確認プロセスや運用コストを削減し、エビデンス(証書)の生成コストを大幅に下げられる。このブロックチェーンに記録されたデータを証書の代わりにすれば、再エネ利用コストの大幅ダウンにつながる。

 日本でも企業の再エネ電力需要が高まっているが、FIT電力は経産省の制度設計で、再エネ電力だけの分離販売ができない仕組みになっている。このため、小売電気事業者は証書付き電力等を販売している。ただ、これらの電力は従来の電力より割高で、かつ、小規模な小売事業者にとっては調達できる再生エネ電力の過不足が経営リスクになり易い状態だという。

 こうした課題を克服するため、リコーでは開発した電力取引システムを小売事業者が参加しやすいプラットフォームとして提供することで、低コストでの再エネ電力取引が国内でも拡大するとみている。

 ブロックチェーンを使った電力取引の取り組みは、他の企業等でも手掛けている。日立製作所、ソニーなどが出資するデジタルグリッド(東京)は、ブロックチェーン電力の取引市場の商用化を進めているほか、みんな電力(同)もブロックチェーンで発電所を特定した再生エネ電気を販売している。

 リコーは、2030年の自社排出の温室効果ガス(GHG)を2015年比で63%削減、2050年にバリューチェーン全体で排出ゼロを目指している。