世界の最富裕層1%のCO2排出量は人口の半分を占める最貧層全体の倍以上。「気候不平等」顕著に。英・スウェーデン共同調査。富裕税・ぜいたく品へのカーボン税提唱（RIEF）
2020-09-21 20:42:53
過去25年間の人類によるCO2排出量に占める世界の1%の最富裕層富の排出量は、人類の半分を占める30億人の最貧層全体の倍以上に相当するとの調査結果が公表された。上位10％までの富裕層に拡大すると、CO2排出量への寄与度は半分以上となる。パリ協定の「1.5°目標」達成のためには、排出量の多い国、排出量の多い産業・企業、さらに排出量の多い富裕層、をターゲットとした抜本的な削減政策の展開が必要となる。
調査は、英NGOのOxfamとスウェーデンのStockholm Environment Institute（SEI）が共同でまとめた 「Confronting Carbon Inequality」と題するレポート。1990年から2015年の間の所得階層別のCO2排出量を調べた。
この25年間で人類由来の大気中のCO2排出量は全体で約2倍に増えている。このうち、所得階層上位10%（約6億3000万人）の排出量が全体の過半（52%）を占める。最上位1%の排出量は全体の15%で、人類の半分を占める最貧困層の排出約7%の倍以上になる。さらに最富裕層1%の排出量の全増加量は最貧層の3倍以上にもなる。
壊滅的な気候変動を避けるには、パリ協定の目標である「1.5°」の気温上昇に抑制する必要性があるが、上位10％の富裕層の排出量は1.5°の気温上昇分の全体の3分の1を占める。これに対して、人口の過半を占める最貧層の1.5°への貢献度は4％でしかないという。
Oxfamの英国代表のDanny Sriskandarajah氏は「最富裕層の過剰消費が気候危機を加速し、地球を危険にさらしている。気候変動の影響からは誰も逃れられないが、最貧層は排出削減が最も少ないのに、温暖化によって引き起こされる洪水や飢餓、サイクロン等の脅威にさらされ、もっとも重い負担を背負わされている」と、『気候不平等』の拡大を指摘している。
2020年には、グローバルな温度上昇はすでに、およそ1°となっている。今年だけでも、気候変動の影響で、インドやバングラデシュは驚異的なサイクロンの襲来を受け、アフリカからインドにかけては、異常増殖したサバクトビバッタ被害で農作物が打撃を受けた。さらにオーストラリアや米国でも想像以上の熱波の影響が続き、カリフォルニアでは壊滅的な森林火災で犠牲者が多発している。
新型コロナウイルス感染拡大に伴って、各国でロックダウンが展開されたことで、CO2排出量は一時的に急減した。しかし、ロックダウン解除後に、再びCO2排出量は増大に向かっている。報告書は、CO2排出量が毎年削減されず、『気候不平等』がこのまま放置され続けると、2030年までに気温上昇は1.5°を突破すると指摘している。
『気候不平等』の格差は拡大しており、所得上位10％階層の排出量がこのままだと、それ以外の他の階層が仮にネットゼロになっても、2033年までに壊滅的な気候変動が拡大することになると警告している。
Oxfamではこうした事態を防ぐには、富裕税の導入のほか、プライベートジェットや、スーパーヨット、さらに高カーボン排出のSUVや、頻繁な航空機利用等のぜいたく品や、ぜいたく行動へのカーボン税課税を提案している。富裕税やカーボン税の税収については、ソーシャルケア部門の雇用増や、グリーン公共輸送手段の増強、気候変動の影響を受ける貧困層・コミュニティでの適応策の実施等に充当するとの考えだ。
OxfamのSriskandarajah氏は「『気候不平等』がこれほど拡大したのは、各国政府がこの間、カーボンコストを無視した高カーボン経済成長を追求してきた直接の結果だ。世界の政治リーダーたちは、コロナ後の経済回復を、経済そのものを再生し、低炭素性格を奨励し、人類すべてにとってより良い未来を創り出す新たな機会としてとらえるべきだ」と強調している。
Research Institute for Environmental Finance