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EU-ETSの排出権クレジット価格、制度発足以来の最高値更新。クレジット1㌧当たり31.30ユーロ。EUの2030年55%削減合意を受け。30年には89ユーロに上昇の予測も(RIEF)

2020-12-12 18:25:51

EU-ETS001キャプチャ

 

  EUが2030年の温室効果ガス排出量の削減目標を55%(90年比)で合意したことを受け、EUのカーボン排出権取引制度のカーボンクレジット価格(EUA)が11日、過去最高値の1㌧=31.30ユーロ(37.90㌦=約3900円)をつけた。市場では30年までの10年間に平均50ユーロの上昇が見込まれ、30年時点では89ユーロにまで上昇するとの見方も出ている。

 

 11日のロンドンのICE先物市場では、クレジットの先物価格が1㌧=31.31ユーロまで上昇した。EU-ETSは2005年から始動しており、これまでのEUAクレジットの最高価格は制度スタート当初の06年4月の30.45ユーロだった。その後、2011年には10ユーロを切り、18年まで低迷が続いた。その後は上昇に転じ、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一時17ユーロ台に下落、10月末にも23ユーロ台に低下。その後、再び上昇基調となっていた。

 

 今回の最高値更新は、EU首脳会議が30年目標で合意したことが大きい。加えて、21年から始まるEU-ETSの第4フェーズでは、総量の削減率が第3フェーズの1.74%から2.2%に縮減されるほか、30年目標の達成に向け、今後さらに総量の縮減が進むとみられることから、EUAの需給はタイトな基調が続くとの見方が有力になっている。http://rief-jp.org/ct8/109126

 

 EU-ETSは現在の第3フェーズのクレジットと、21年からの第4フェーズのクレジットを並行流通させることで、市場のクレジット需要に対応できるようにする方針だ。ただ、金融情報サービスのRefinitivによると、EU-ETSのクレジット市場は、対象企業が「55%」の将来の目標に適合するために、クレジットの手当てが進行し、価格上昇が続くとみている。

 

 同社は、EUAの先物価格は今後10年間は平均50ユーロ超えで推移すると予測する。それによると、2021年は横ばいから若干低下するが、22年以降2025年までは30ユーロ台で推移、その後は、2024年に40ユーロ台、25年に50ユーロ台等と、毎年10ユーロ前後の上昇が続く。中間目標の30年のクレジット価格は、平均89ユーロと、100ユーロに近づくとみている。

 

 Refinitivのカーボンリサーチチームの責任者であるHæge Fjellheim氏は「30年の55%削減の目標を実現するために、石炭依存の産業等は、従来のように燃料転換で目標達成をカバーすることが困難になるので、よりコストの高い排出削減対策に切り替えることを迫られる。そうなると、クレジットで代替する需要がさらに高まる」とみている。

 

 さらに2050年のネットゼロ目標を実現するには、高排出企業はさらにコストの高い排出削減を優先せざるを得なくなる。EU-ETSの総量枠も55%目標に合わせて、段階的に縮小されると想定される。これらのことを踏まえると、EUAクレジット価格の上昇は続くとみられる。

https://www.theice.com/products/197/EUA-Futures

https://www.theice.com/products/197/EUA-Futures/data?marketId=400187&span=1