HOME8.温暖化・気候変動 |欧州排出権取引価格(EUA)、史上最高価格水準で推移、一時、34ユーロに接近。昨年末のEU首脳会議での2030年度温室効果ガス削減目標(55%削減90年比)合意を好感。寒波も影響(RIEF) |

欧州排出権取引価格(EUA)、史上最高価格水準で推移、一時、34ユーロに接近。昨年末のEU首脳会議での2030年度温室効果ガス削減目標(55%削減90年比)合意を好感。寒波も影響(RIEF)

2021-01-06 18:26:23

EUA001キャプチャ

 

 EUの排出権取引制度(EU-ETS)のカーボン(EUA)クレジット価格が昨年末以来、1㌧33ユーロ前後の史上最高価格水準で推移している。年末のEU首脳会議で2030年の温室効果ガス排出量を90年比55%減とすることで合意したほか、欧州では寒波が続いていることなども要因となっている。年初の取引では一時、34ユーロに接近した。

 

 米国のインターコンチネンタル取引所(ICE)によると、6日午前8時のEUA先物の取引価格では33.450ユーロとなっている。

 

 EU-ETSの域内取引で売買されるクレジット(EUA)の変動要因は、政治的な要因のほか、気候変動によるエネルギー需要の増減、EUが実施するクレジットのオークション等が要因となる。EU首脳会議での2030年目標の合意は、このうち政治的要因し。30年目標が従来の40%削減より15ポイント上積みされたことで、各国の排出規制が強化される期待が長期的な展望として、クレジット価格に反映しているとみられる。

 

 今冬は、欧州全域が寒波に覆われている。冬の暖房需要増から化石燃料業者が需要に応える操業を維持するため、クレジットでの補填需要が高まっていることもある。さらには、クレジット市場の需給要因となる排出枠のオークションが1月末までないことも、クレジット価格をタイトにする要因になっている。

 

EU-ETS発足以来ののEUA価格の推移。
EU-ETS発足以来ののEUA価格の推移。

 

 昨年末のクレジット価格は、クリスマス前に32.32ユーロをつけ、年初から17.66ユーロ上昇した。ただ、取引量はクリスマス前後は平均より低かった。クリスマス明けの先月28日には33.50ユーロと、1ユーロ以上上昇した。その後、年末で取引量の乏しい中で、いったん下落した。しかし、年が明けて年初の取引では、一時、34ユーロにまで上昇した。

 

 特に厳寒が続き、今月半ばまで平均気温を下回る寒波で覆われるほか、2月にも次の大規模な寒波が予想されていること等から、当分は、エネルギー需要の増大を反映したカーボン価格の上昇が続きそうという。新型コロナウイルス変異種による感染拡大の影響で、各国がロックダウンを強化していることも、家庭での暖房需要増大を生み出しているとみられる。

https://www.theice.com/products/197/EUA-Futures/data?marketId=5693906