米国の第一四半期の風力・太陽光等のクリーンエネルギーの新規稼働量、同期過去最高の前年比約10%増。建設・計画中案件も急増。バイデン政権の気候政策に市場が即応。日本市場は？（RIEF）
2021-05-17 08:49:58
バイデン政権の積極的な気候変動政策を反映する形で、今年第一四半期（1～3月期）の風力発電や太陽光発電等のクリーンエネルギーの新規稼働能力が前年同期比約10%（9.7%）の伸びを示し、累積のクリーンエネルギー発電量は5年前に比べ倍増したことがわかった。建設中・先行開発中等の案件は第一四半期の稼働分の約22倍にも達しており、米エネルギー産業は急速に再生可能エネルギーシフトすることになる。
米クリーン電力協会（American Clean Power Association:ACP）が最新の四半期レポートで開示した。それによると、風力、太陽光、蓄電設備を合わせた第一四半期の新規稼働は17州で38のプロジェクトに上った。追加された総発電量は3859MW。前年同期の3519MWより340MWの増加（9.6%増）で第一四半期としては過去最大の導入量だった。
その結果、現在、米国で稼働中のクリーンエネルギー量は173,032 MW（170GW）に達した。全体の稼働中クリーンエネルギーの内訳では、風力発電が7割強（72.5%）を占め、次いで太陽光発電が26.5%、蓄電設備が1％となっている。第一四半期の新規稼働の地域別では、風力、太陽光の両事業ともテキサス州が最も多く、次いでオクラホマ、カリフォルニア、サウスダコタの順。
発電事業者では、Duke Energy、EDF Renewables、Avangrid Renewables、Southern Powerの4社で合計1300MW以上の新規発電量を稼働させた。このうち、Dukeがもっとも多い499MW、次いでEDFの456MW。
現在建設中の事業規模は、37,719 MWに達する。全米ほぼすべてに近い44州で436件の建設プロジェクトが進行中。第一四半期中にも新たに27州で229件の事業が始まった。新規建設中の事業でも、自然条件の豊かなテキサス州が最も多く2400MW、次いでカリフォルニア州が2019MW、ネバダ州の1311MW、ニューメキシコ州1050MW、フロリダ州1036MWと続く。
建設前の先行開発（Advanced Development）段階の事業は、3月末時点で47,731MW分が進んでいる。このうち第一四半期にADに入った案件は14,568 MW。全米でみると、46州で151件の案件が計画されている。この中には連邦水域での洋上風力発電事業お14件も入っている。第一四半期中ではインディアナ州が新規太陽光発電事業（ Dunn’s Bridge Solar II とDunn’s Bridge Solar I）の発表で2134MWとトップに。次いでカリフォルニア州、テキサス州、ワシントンDCの順。
バイデン政権が洋上風力発電事業を2030年までに30GW建設するとの目標を掲げたが、第一四半期にはDominion Energyによる12 MW規模のCoastal Virginia Offshore Windプロジェクトが公式に認可された。同事業は同社が計画する2.6GWの複数年プロジェクトの第一ステップ。またニューヨーク州Energy Research and Development Authority（NYSERDA）は、同州沖での洋上風力発電事業のパートナーとしてEquinorとBPを選定した。両社は1,260MWのEmpire Wind 2事業と1,230 MWのBeacon Wind 1事業を展開する予定だ。
米各州およびクリーンエネルギー事業者は、バイデン政権の発足をにらんで昨年中から事業展開の準備を進めていた。政権発足による支援策の展開を受けて、AD化、建設段階移行等を競うように進めているわけだ。「2030年46%～50%削減」を打ち出した菅政権だが、それを実現する政策支援措置等が示されていないことから、米国の様な迅速な市場の反応につながっていない。「口先だけ」で、市場が信用していないともいえる。
https://cleanpower.org/wp-content/uploads/2021/05/CPQ-2021Q1_public.pdf
Research Institute for Environmental Finance