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太陽光発電モジュール価格がグローバルベースで年初来18%の上昇。原料のシリコン価格が上昇転じる。各国の「ネットゼロ」宣言で、発電事業増大による需給ギャップ発生か(RIEF)

2021-05-26 18:04:28

Solar001キャプチャ

 

 日本を含め主要国が2050年ネットゼロを宣言し、脱炭素・再エネ転換を打ち出す中で、グローバル市場での太陽光発電のモジュール価格が、年初来18%高とこれまでの価格低下傾向から一転している。太陽光パネルの主原料となるシリコン価格は過去10年間で90%以上下落してきたが、ここにきて上昇している。太陽光事業が各地で集中することによる一時的な需給ギャップが原因か、パネル生産力の限界を露呈したのか、市場関係者の間でも議論が分かれているようだ。

 

 Bloombergによると、太陽光パネルの価格が前年比で上昇したのは、過去10年では今回を除くと2013年にあっただけ。太陽光パネルの一貫した価格下落は再エネ普及の原動力となってきた。国際エネルギー機関(IEA)が先に公表した「2050年ネットゼロ・ロードマップ」でも、エネルギー分野での主役は再エネで、その中でも太陽光発電は2030年までに630GWの発電量に達する、と推計している。

 

過去10年の太陽光パネル価格の推移
過去10年の太陽光パネル価格の推移

 

 今回のモジュール価格の上昇要因では、パネルの原材料となるシリコン(ポリシリコン)価格が4倍増になっていることが大きい。その結果、計画中、建設中の太陽光発電事業の中には、完成の遅れや見直しのリスクが出ているという。この傾向が長引けば、日本を含めて各国政府の「ネットゼロ」政策にも影響が及ぼす可能性もあるとされる。

 

 シリコン価格の上昇等を推計したBloombergNEFの太陽光アナリストのJenny Chase氏は「過去10年以上を振り返って、今回ほどの市場の混乱は初めて。事業者や政府の中には、より安いパネルの確保のために現状の太陽光発電事業を一時停止しているところもある」と説明している。BNEFでは今年の太陽光発電事業の建設見通しを、当初見込みから修正したとしている。

 

ポリシリコン価格の推移
ポリシリコン価格の推移

 

 グローバルに太陽光発電パネルの販売と同事業を展開するカナディアン・ソーラー社も「価格がさらに高くなると、需要に影響を与え、いくつかの大規模な事業の遅れにつながるかもしれない」と指摘している。すでにインドでは現在の同国の太陽光発電能力の4分の1以上に相当する約10GWの事業が影響を受けそうという。

 

 バイデン政権になってシェールガス・油等の化石燃料事業から、再エネ事業にエネルギー投融資の力点がシフトしている米国でも、いくつかの事業が延期される懸念が出ている。

 

 太陽光モジュール価格の上昇要因は、シリコンの価格上昇だけではない。パネルメーカーのMaxeon Solar Technologies Ltdは、パネル製造工程のサプライチェーンコストの上昇も影響していると指摘している。またパネルの架台や枠組み等に使われる鉄やアルミ、銅等の値段、及び輸送コストの上昇もある。

 

 しかし、シリコン自体は、リチウムイオン蓄電池等のように希少なレアメタルに依存するわけではない。地球上の砂地で豊富に産出されるだけに、価格上昇を受けてシリコン製造の強化が進めば、早晩、需給ギャップは克服されるとの見方も少なくない。また太陽光発電に価格一服感が出ると、再エネ発電で「双璧」となっている風力発電への需要が高まるとの見方もある。

 

 ただ、市場アナリストの中には、シリコン価格は2022年末まで、比較的強めで推移するとみる向きは少なくない(Roth Capital Partnersのアナリスト、Philip Shen氏)。パネル価格の高止まりが続くと、パネルの販売や発電事業での収益減少につながる可能性も出てくる。パネル製造メーカーでは価格上昇を相殺する発電効率の改善が進むことへの期待もある。

https://www.aljazeera.com/economy/2021/5/24/bbdropping-solar-module-prices-which-helped-boost-sector-hit-bum?fbclid=IwAR17pimyh0cMOvEzs9gCJp6-7mIdPWG17Qcjl3sur8Fe3t3zJz2hY4FNN1c