米石油大手メジャー、エクソンの株主総会で、「脱炭素への経営転換」を求めるアクティビストファンド提案の取締役2人選任。もう一人も可能性。市場が経営転換を支持（RIEF）
2021-05-27 13:21:37
米石油大手のエクソンモービル（ExxonMobile）が26日開いた定期株主総会で、同社に気候変動対策を求めるアクティビストのファンドが推薦した取締役候補4人のうち2人が選任された。会社推薦の現職の取締役は再任を拒否された。市場では、気候変動に大きな影響を及ぼすエネルギー大手に対する投資家行動として「歴史的な瞬間」になったとの評価が高まっている。
株主投票の暫定結果によると、現職の取締役12人のうち8人が再任された。一方で、投資会社「エンジン・ナンバーワン（Engine No. 1）」が推薦した4人のうち、少なくとも2人が取締役に選任されることが確定した。すべての投票結果の確定次第で、残り2人についても選任の可能性があるという。
（追記：その後、投票結果の最終確定により、残り2人のうち、Alexander Karsner氏が選任され、EN1提案の取締役は3人採用となった。2021年6月4日）
EN1が保有するエクソン株は全体の0.02%にすぎない。しかし同社は昨年12月から、エクソンが脱炭素のエネルギートランジション（移行）を乗り切るには、経営陣を新たなメンバーに切り替える必要があるとして、エクソン及び株主に経営陣刷新を呼び掛けてきた。EN1の提案に対して、主要な米年金等の機関投資家や議決権行使助言会社の賛同を得た。EN1の提案の支持者には、世界最大の資産運用機関であるBlackRockも加わったとみられる。
EN1推薦で、選任が確定したのはKaisa Hietala氏とGregory Goff氏の2人。エクソンの定款では取締役候補が定員数を上回った場合、株主投票で上位の12人が就任する規定になっている。したがって暫定開票の段階で、会社側推薦の現職取締役2人が再任されなかったことになる。
取締役に選任されたKaisa Hietala氏は、フィンランドのエネルギー企業Nasteの元エグゼクティブ副社長で、石油精製事業の専門家。現在は、サステナビリティビジネスのコンサルティングのGaia Groupに所属している。同氏の取締役推薦には、議決権行使助言会社大手のISSと同Glass Levis両社の支持を得ていた。
Goff氏も石油産業の専門家として知られる。米石油精製のAndeavorのCEOを務め、同社が2018年にMarathon Petroleumに 売却された際に、CEOを辞任している。両氏とも石油ビジネスの専門家だ。
残り2人のうち、Alexander Karsner氏は、プライベートエクイティの専門家で、これまでにテスラのアドバイザーを務めたほか、連邦政府のエネルギー補佐官の経験もある。同氏は全投票精査によって選任される可能性が強いという。もう一人の推薦候補のAnders Runevad氏は、デンマークの風力発電設備製造会社VestasとEngineの元CEO。現時点では同氏の選任はない見通し。
エクソンの経営陣は株主に対して、EN1が推薦する候補を承認しないよう要請。総会直前の23日には1年以内にエネルギーと環境問題の専門家2人を取締役に追加する方針を伝える書簡を株主に送付した。しかし、多くの投資家の信頼を得るには至らなかった。脱炭素経営への転換を市場が支持した形だ。
株主総会では、EN1の提案のほか、他の株主が提案した、CEOと会長職の分離など7件の議案のうち、ロビー活動に関する報告を求めた2件が承認された。
エクソンの会長兼CEOのダレン・ウッズ（Darren Woods）氏は総会後、「選任されたすべての取締役を歓迎し、株主のために建設的に、かつ協働して働きたい。われわれは、低炭素ソリューションのほか、コスト削減と収益を改善努力を進めるためのわれわれの声明への、株主の幅広いフィードバックと支持に基づいて積極的な行動を展開している。今日の株主総会で聞いた株主の声を踏まえ、さらに対応していく」との声明を出した。
気候変動に大きな影響を及ぼすエネルギー大手に対しては、同日、オランダのハーグ地方裁判所が、ロイヤル・ダッチ・シェルの気候変動対策の不備を指摘する環境NGOらによる訴訟で、原告勝訴の判決を出している。エネルギー会社の経営を脱炭素化に向けて実質的に変更させていく社会、市場の圧力がグローバルに高まっていることを示している。http://rief-jp.org/ct4/114551
Research Institute for Environmental Finance