HOME |住友商事、2020年度に豪州石炭火力発電事業等で総額880億円の損失。年間損失の半分以上を化石燃料関連事業で計上。米国ではバイオマス事業で自然破壊増大。米環境団体が報告書(RIEF) |

住友商事、2020年度に豪州石炭火力発電事業等で総額880億円の損失。年間損失の半分以上を化石燃料関連事業で計上。米国ではバイオマス事業で自然破壊増大。米環境団体が報告書(RIEF)

2021-06-10 16:42:15

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 住友商事が2020年度の事業において、オーストラリアの石炭火力発電事業や米国でのシェール石油・ガス事業等で、同期の全損失額の半分以上に相当する合計880億円の損失を計上したことがわかった。米環境団体のマイティ・アース(Mighty Earth:ME)が報告書で指摘した。報告書によると、住友商事は化石燃料事業での損失に加えて、米国の森林資源を原料にするバイオマスペレットを大量に日本に輸入しており、現地で自然破壊への批判が高まっているとしている。

 

 住友商事の海外での化石燃料事業やバイオマス事業に対する批判は高まっている。オーストラリア拠点の環境金融NGOマーケット・フォース(MF)は、住友商事に対して、パリ協定の「1.5℃目標」に沿った経営を行う事業戦略を盛り込んだ計画の策定を求める株主議案を提出している。6月18日の株主総会での取り扱いが注目されている。

 

 MEの報告書が指摘した住友商事の化石燃料事業での損失(一過性損失)は、2020年度単年度だけで、オーストラリアの石炭火力発電所事業で260億円、米国のマーセラスおよびイーグルフォードでの石油および天然ガス関連プロジェクトで80億円、発電所の建造費用や建造遅滞に関連する損失として540億円を、それぞれ計上した。これらの損失は、同期の損失額1531億円の半分以上を占める。

 

 住友商事は、決算においてこれらの情報を開示しており、「『資源ビジネス』は、第4四半期は180億円となり、 当第3四半期との⽐較では、220億円の増益となった」として回復基調にあることを強調している。

 

 これに対して、MEの報告書は、「住友商事は、地上で最も深刻な環境破壊を引き起こす燃料を開発、輸送、燃焼し、またその資金提供や運送にも関与する、世界の石炭およびバイオマスの流通網の中心企業の1つ。現在も今後、20年以上にわたる化石燃料関連の事業計画を立てている。同時に株主にも損害を与えている」と指摘している。

 

 化石燃料事業による環境破壊だけではなく、住友商事は森林を開発して製造する木材ペレットを「バイオマス燃料」として火力発電所等で利用するため、アメリカおよびカナダから大量に輸入している。このため、米加の森林資源の破壊が加速度的に進んでいる点にも触れている。

 

 報告書によると、住友商事傘下のペレット会社が、カナダのブリティッシュコロンビア州の老齢樹林(原生林)での伐採計画を進め、地域住民や環境団体から非難を集めている。住友商事に森林資源を原料として供給する米南東部の主要サプライヤーは、すでに生態系にダメージが生じている森林で根元から伐採した樹木を使用していることも批判を浴びている。

 

 今年2月、米欧を中心とした約500人の学者が、バイデン大統領、菅首相、EUのフォンデアライエン欧州委員長らに宛てて、化石燃料を燃やす代わりに樹木を燃やすことの危険を訴える公開書簡を送っている。同書簡では、「樹木は、気候変動に関しても生物多様性に関しても、生きていてこそ価値がある。ネットゼロエミッションの目標を今後達成するには、各政府は森林を燃やすのではなく、森林を保全して復元する努力を行うべき」と警鐘を鳴らしている。

プレス・リリース 環境保護団体マイティ・アース 報告書「隠蔽の煙幕:住友商事の『カーボンニュートラル』失敗の数々」を発表 気候変動行動計画での住友商事への株主提案の必要性示す – Mighty Earth

Mighty-Earth-Sumitomo-Report-6.10.2021web.pdf (mightyearth.org)