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三菱商事、オーストラリアで「原生林再生事業」からのカーボンクレジット創出企業に資本参加。グローバルな脱炭素化ビジネスとして展開目指す。日本でも手掛けてもらいたい(RIEF)

2021-07-29 15:22:56

Shoujiキャプチャ
 三菱商事は29日、オーストラリアで原生林再生プロジェクトを通じたCO2の吸収とカーボンクレジットの販売業務を展開するエーアイカーボン(Australian Integrated Carbon)社の株式40%を取得した。国際競争力のある同社の原生林再生プロジェクトのノウハウを取得し、脱炭素社会に向けて需要の高まるカーボンクレジット事業を、オーストラリアだけでなく、グローバルに展開する方針だ。

  エーアイカーボン社は原生林を再生する「カーボンファーミング」や土壌改良を通じた「ソイルカーボン」等の事業から、CO2吸収・貯留力を生みだすカーボンクレジット事業を展開している。「カーボンファーミング」の場合は、農家の牧畜プロセスの見直しや改善を通じて原生林を再生することで、大気中のCO2の吸収・固着力を高める。オーストラリア政府の公認クレジットとしての認証を得ることで、脱炭素を求められる製造業等へ販売する。
 エーアイカーボン社は三菱商事との提携によって、事業ポートフォリオを拡大できる。年間では最大約500万㌧、2050年までに累計約1億㌧のカーボンクレジットを生みだす計画だ。AICのCEOであるAdam Townley氏は「グローバルプレイヤーの三菱商事との提携は、オーストラリアだけでなく国際的なカーボン市場での事業展開を進めるうえでの重要な機会となる」と強調している。
 オーストラリア政府は、2015年以来、合計45.5億豪㌦を拠出して、国主導のカーボンクレジットの買取制度を確立している。同制度での入札取引量は、2020年は年間約1600万㌧。現在も成長を続けている。EU-ETSの様な排出権取引の場合は、産業・企業の脱炭素化を促す効果があるが、原生林再生、土壌改良等によるクレジット創出は、脱炭素化に貢献するとともに、生物多様性の維持・強化のほか、農場等の干ばつへの耐性向上、農家の収益安定化等をもたらす幅広い効果が期待される。
 こうした効果を踏まえて、オーストラリア州政府は同プロジェクトを「脱炭素事業」として導入を奨励している。また、同国のパリ協定目標達成計画でも重要な取り組みとしている。日本も農地の休耕田対策や、里山の整備等を通じて、CO2吸収力を高める制度整備に活用できそうだ。三菱商事にはオーストラリアでの知見を踏まえて、日本政府に提案してもらいたい。
 三菱商事は、「今回のエアカーボンへの資本参画を足掛かりにして、競争力ある原生林再生プロジェクトのノウハウを獲得し、オーストラリアの他の地域や世界の他地域において、同プロジェクトを拡大・展開することで、『低炭素社会への移行『、並びに『地域・コミュニティーとの共生』等の、わが社が掲げるサステナビリティ重要課題の解決に取り組んでいく」とコメントしている。