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経産省、改正産業競争力強化法で、日本版「トランジションファイナンス」の金融支援制度創設。外部評価機関に5社指名。トランジション事業計画の認定基準は「大雑把」(RIEF)

2021-08-04 17:17:15

METIキャプチャ

 

 経済産業省は3日、2050年のカーボンニュートラルに向けたCO2排出削減取り組みのためとして、対象事業に金融支援を行う日本版「トランジションファイナンス」制度を創設したと発表した。事業者の事業計画の認定は、民間の指定外部評価機関が、計画が野心的かどうか等の3つの基準への適合性を評価する。認定されると「カーボンニュートラル投資促進税制」等の適用を受けることができる。

 

 制度の発足とともに、外部評価機関として、DNVビジネス・アシュアランス・ジャパン、ヴィジオSAS、格付投資情報センター、サステイナリティクス・ジャパン、日本格付研究所の5社が指定された。

 

 支援の対象となる事業者の事業計画認定については、産業競争力強化法に基づいて、10年以上の長期間のCO2削減を目指す事業計画を立案し、同法に基づく認定を受けることになる。認定事業者は同省が定めるトランジションファイナンス、サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)を活用したファイナンスを金融機関から受けるとしている。

 設定された評価基準は、①野心的な目標が設定されているかどうか②トランジション戦略が妥当なものであるかどうか③モニタリング・レポーティングが適切に実施されるかどうかーーの3点。

 

 事業者の事業計画がこれらの基準を満たしているかどうかを外部評価機関が認証する。ただ、「野心的」の概念があいまいであるほか、「戦略の妥当性」も、主観的な評価に陥る懸念もある。「野心的」を「パリ協定と整合的」と読み替えるとしても、わが国ではパリ協定の「国が決める貢献(NDC)」目標に基づく産業・企業別の基準がないことから、大雑把な評価になりかねない。

 

 「日本版トランジションファイナンス」の基準として先に、経産省、環境省、金融庁の3省庁が公表した「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」も、「大雑把」だ。

 

 同指針では、対象事業について「『グリーンボンドガイドライン』に具体的な資金使途が例示されていなくても、プロセス等が従っていれば対象となる」とするほか、「市場関係者によって意見が分かれるセクターや技術へのエクスポージャーを持つ企業の資金調達の場合、『トランジション』の要素を市場から求められる場合がある」などと、主観的判断をし易い内容になっている。

 

 日本版のトランジションファイナンスの最終的な担い手になる投資家や銀行等は、「トランジション」という名の「ブラウン資産」を掴まされないように、投融資先事業者の事業内容の実態を、しっかり把握する必要がある。

https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210803004/20210803004.html