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日本の社会的責任ファンド、エコファンドの東電株の扱い。売却か、保有かで依然、分かれる(FGW)

2011-04-13 18:37:08

東京電力の株価は、大きく下落しているが、企業の社会的責任や環境配慮を重視したSRIファンド、エコファンドの同株の取り扱いが、依然、ばらつきがある。すでに全株売却したファンドもあるが、大和証券系のダイワエコファンドなどは、事故から一カ月がすでに過ぎたにもかかわらず、取り扱いを明示していない(保有継続か?)。

すでに報じたように、住友信託銀行系の住信アセットマネジメントは、同社が運用する4つのSRIファンドと、①つの生物多様性ファンドの投資対象から東電株を全株排除した。東電の原発事故の影響が広範囲、長期化することの影響を重視した措置である。http://financegreenwatch.org/jp/?p=1049

また中央三井アセットマネジメントは、中央三井社会的責任ファンド(愛称:SRI計画)に組み入れている東電株をガバナンス・ウォッチの対象として指定、投資比率を下げている。http://financegreenwatch.org/jp/?p=810

こうした動きに対して、大和証券系の大和投資信託の「ダイワ・エコ・ファンド」「大和・エネルギー・テクノロジーファンド」は東電株を組み入れ資産としている。だが、事故後にどう扱ったのかの情報開示がみられない。また三菱UFJ信託系の三菱信託UFJ投信の「三菱UFJ・SRIファンド(ファミリーフレンドリー)」も同様に、東電株を組み入れ資産にしているが、売却したのかどうかの情報公表がない。

 今回の事故は、想定外の地震と津波による原発の機能不全で、東電の経営の基本姿勢に揺らぎはないと、判断したうえで、東電株を引き続き保有するならば、それはSRIファンドの運営方針として理解可能だ。あるいは、放射能汚染の広がりも、もちろん意図的なものではなく、農地や、大気、海水への放射能汚染は、通常の環境汚染と区別するべきものだと判断しているならば、同社株の保有を継続するとの姿勢もあり得るだろう。

 いずれにしろ、社会的責任ファンド、あるいは環境ファンドと、銘打って投資家に販売している以上、どういう理由で保有を継続するのか、どういう理由で除外するのかの説明責任は最低限必要だ。監視銘柄として指定した中央三井アセットにしても、その後、その監視の視点がどう変わっているのか、いないのかの表明がないので、どうもわかりにくい。すでに東電株は、500円を割るレベルにまで下がっており、今後の賠償責任や廃炉費用負担などを想定すると、債務超過に陥るリスクが高まっている。投資家への説明責任を考えると、迅速に追加判断をする必要があるのではないか。

 何度も言うが、こうした投資姿勢の“不明確さ”や、対応力の”鈍感さ”が、日本のSRI市場の成長を阻んできたと言ってもいい。「SRIファンドもついでに出しておけばいい」といった程度の商品提供だったのか、との疑念を生みだしてしまう。SRIやエコファンドはファッションではないはずだ。大和投資信託と三菱UFJ投信の動きを注視したい。