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滋賀県、自治体初のサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)発行へ。50億円。KPIは県庁のCO2排出量の数値目標か。目標達成ができなかった場合の説明は投資家だけでなく県民にも必要(RIEF)

2022-01-19 13:13:01

Shigaスクリーンショット 2022-01-19 130533

 

 滋賀県は18日、国内の自治体として初となるサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)を発行すると発表した。発行額は50億円。10年債で、今年4月~5月に発行するとしている。資金使途は、グリーンボンド等と異なり、特定の事業に充当するのではなく、同県の一般資金として活用する。県としてのサステナビリティ改善目標を設定し、その達成状況を投資家に説明することになる。

 

 同県のSLBの取り扱い主幹事は、みずほ証券、野村證券の2社。三日月大造知事は同日の記者会見で「CO2ネットゼロに向けた県の覚悟を示すとともに、ESGを重視する機関投資家にしっかりアピールしたい」と強調した。

 

 県は地方自治体によるSLB発行は国内だけでなく、世界でも初めてと強調している。確かに欧米でも自治体がSLBを発行する事例はない。逆にいうと、自治体がSLBを発行する必要があるのか、という疑問も出てくる。

 

 SLBは特定のグリーン事業等に資金を充当するのではなく、発行体にとってマテリアルな重要業績指標(KPI)を設定し、その達成を投資家に約束するサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)を定めて発行する仕組みだ。

 

 今回の滋賀県の場合、KPI、SPTをどう設定するのかはまだ公表していない。ただ、県は「CO₂ネットゼロ推進のため『CO₂ネットゼロ社会づくり推進計画』の策定と、『環境にやさしい県庁率先行動計画(GOS)』の改定を進め、この中で国よりも厳しい数値目標の設定を予定する」としている。そう考えると、CO₂削減の数値目標をKPIにする考えのようだ。報道では県庁の2030年度の排出量を国の46%削減より少し多い50%削減にする方針という。

 

 県庁が排出するCO₂量が県政にとって、あるいはサステナビリティの推進にとって、重要なKPIかどうかは議論があるだろう。SLBの場合、設定したKPIを達成できなかった場合、通常は投資家に払う金利等の引き上げ条項をSPTで設定する。自治体の場合、KPI関連の対策が不十分だと、支払い金利等が高くなることで、県財政に負担をかけることになる。このため、投資家だけではなく、県民にわかり易く説明する必要がある。

 

 滋賀県は「世界初」とアピールする。だが、欧米の自治体等がグリーンボンド等の発行からSLBの発行に向かわないのは、ボンドの資金使途を住民に明確に示すことを重視するためと考えられる。SLBが、資金使途を明確にしたグリーンボンド等よりも、自治体および住民にとってプラスだという明確な説明が必要だろう。

https://www.pref.shiga.lg.jp/kensei/koho/e-shinbun/oshirase/323067.html