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住友林業、2030年に向け保有森林面積をほぼ倍増の50万haに。森林投資拡大のため、1000億円規模の「森林投資ファンド」設立。出資者にカーボンクレジット配分(RIEF)

2022-02-14 16:27:09

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 住友林業は14日、2030年に向けたグループ長期ビジョンと中期経営計画を発表した。この中で、木材資源を最大限に活用する脱炭素化とサーキュラーバイオエコノミーの確立を目指すとして、その軸に1000億円規模の森林投資ファンドを設立する。新設するファンドは国内外の森林運営に投資し、森林資源によるCO2吸収源からのカーボンクレジットを出資企業や投資家等に配分する考えだ。脱炭素化でクレジット需要が世界的に増大するとみられることから、自然資本の保全と脱炭素化を両立させて事業の柱に据える。

 

 (写真は、住友林業が国内の森林で実施している森林保全のボランティア活動の様子=同社HPより)

 

 2030年をターゲットとした長期ビジョンは「Mission TREEING 2030」。同社が強みとしてきた森林資源の価値を、地球環境、人々の暮らし、社会、市場、経済活動等に提供することで「新たな未来の力へと変えてく」と位置付けた。この長期ビジョンを達成するための重要課題として「地球環境への価値」、「人と社会への価値」、 「市場経済への価値」の3つの価値を設定、それぞれの価値を同時実現するとしている。

 

 ビジョンに基づく事業方針としては、① 森と木の価値を最大限に活かした脱炭素化とサーキュラーバイオエコノミーの確立 ②グローバル展開の進化③変革と新たな価値創造への挑戦④成長に向けた事業基盤の改革ーの4方針を制定。このうち柱となる①については、2030年度に内外での森林保有・管理面積を、現在より約8割増やして50万haに引き上げる目標を設定した。

 

 こうした森林資源拡大戦略の軸として、設定するのが「森林投資ファンド」だ。50万haへの保有・管理森林拡大の推進ビークルとして、広く投資家や企業に出資を求め、森林資源の保全とCO2吸収源によるクレジット提供を目指す。現在、同社は国内で4.8万haの社有林を保有するほか、国外ではインドネシア、パプアニューギニア、ニュージーランドなどで23.1万haの森林を管理・保有しており、合計すると27.9万haとなっている。

 

  これを30年にはほぼ倍近くに引き上げるためには、海外を中心に大規模な森林投資が必要になる。同社では、そうした森林投資をファンドを設定して推進する考えだ。投資する森林からは、木材として利用する林業収益だけでなく、適切な森林管理によって、違法伐採や焼き畑等による農地転用を防ぐことで維持・高度化される森林のCO2吸収力を、保全面積や樹種などに応じて測定し、カーボンクレジットを算出する。クレジットは出資企業に認証付きで配分する計画だ。

 

 パリ協定が目標とする2030年までに世界の気温上昇を産業革命前から1.5℃以内に抑えるためには、企業活動による排出削減に加えて、森林による吸収源等から算出されるクレジットの活用が不可欠とされる。すでに国際航空や同海運ではグローバルに排出削減規制が導入され、航空各社や海運各社等では、自社のCO2排出量削減のためにクレジット需要が増大している。

 

 こうしたクレジットを売買する取引市場の整備も始まっている。ただ、自然保全等をベースとするクレジットの場合、自然条件によって吸収源の評価にバラつきがあるなどの課題もある。住友林業では、クレジットの品質管理を高めるため、同社がこれまで培った森林運営ノウハウに加え、人工衛星データを活用した衛星画像や気象情報と地上の観測機器によるデータ等を組み合わせて、データ管理力を高めていく方針としている。

https://sfc.jp/information/news/pdf/2022-02-14-05.pdf