韓国、産業界主導で自主的カーボンクレジット（VCM）取引市場を今年後半にも開設へ。国内の公的排出権取引制度（K-ETS）と連動するほか、海外取引市場との連携も目指す（RIEF）
2023-07-17 14:40:31
韓国は今年後半にも同国初の民間ベースでの自主的カーボンクレジット（VCM）取引所を開設する。産業団体の大韓商工会議所（KCCI）が主導する。 同国ではすでに公的な排出権取引制度（K-ETS）が稼働しており、企業はVCM市場での取引クレジットを、K-ETSの規制適合にも活用できる。同時に、韓国版VCM市場は海外のVCM市場との連携も目指す。日本でも、東京証券取引所と、民間のSBIグループがそれぞれ今秋をメドに、国内でのVCM取引市場開設を目指しているが、削減義務を伴う排出量取引制度の設立は10年先で、海外VCMとの連携も見通せていない。
（写真は、KCCIの本部）
韓国版VCM市場を導入するKCCIは、今年初めに、国内で創出するオフセットクレジット等を評価する「カーボン削減認証センター」を立ち上げている。クレジットは対象となるCO2排出削減度の高い製品、サービス、技術等を削減認証基準に照らして、同センターで一括して認証する仕組みだ。
例えば、半導体生産に際して、CO2排出量を削減した低炭素型半導体の生産に切り替える事業はクレジットも創出でき、認証対象となる。また韓国企業が海外で実施する植林事業等からオフセットクレジットも対象だ。実際に、石油精製業や通信事業を軸とする韓国の財閥グループ「SKグループ」が途上国で展開する植林事業も候補となっている。
VCM市場での取引は企業の任意だが、同国の主要な排出企業は国の排出権取引制度「K-ETS」の対象として排出削減を負っている。このため、自社の排出削減に加えて、VCMクレジットを売買することで、弾力的な削減義務の履行が可能になる。VCM市場を立ち上げるKCCIは、K-ETSと連動したVCM取引が可能になることで、ネットゼロ目標の実現をスピードアップできると説明している。
韓国は2015年に国内で削減義務を負うEUの排出権取引制度（EU-ETS）タイプのK-ETSを導入している。EUと同様に、段階的に制度を強化しており、2021年からは第3フェーズ（2021-2025年）に入っている。現在の対象企業は684社、カーボンクレジットの年間取引量は2021年を通じて5415万㌧と過去最大規模を記録した。クレジット価格は2020年3月にはトン当たり4万ウォン（約440円）を記録している。
K-ETSでのクレジット取引は、規制対象の企業だけが取引する仕組みだが、VCM取引所での売買には、K-ETSの規制対象企業のほか、規制対象外の企業、個人、投資家等も参加できる。KCCIでは、輸出企業はK-ETSの規制とは別に、一定のVCMクレジットを購入することで輸出品のカーボン負荷を削減し、輸出競争に資することができる、としている。
KCCIは設立する国内VCM市場を海外の同市場とも連携させることも目指すとしている。連携先は、他のアジア諸国の市場のほか、現在、アラブ首長国連邦（UAE）をはじめとする中東諸国との間でも市場の相互開設を協議しているという。日本で計画中の2市場との連携も可能かもしれない。https://rief-jp.org/ct4/136301?ctid=69
脱炭素化への動きが加速していることから、グローバルなVCM市場は拡大を続けており、取引規模は現行（5億2000万㌧ : 2020年）の水準から、2030年には100倍の500億㌧規模に増大するとの推計も出ている。KCCIの最近の企業調査によると、韓国の売上上位1000社の主要企業のうち67％は、VCMは自社の排出削減に貢献すると肯定的に回答している。さらに46.3%はVCM取引に際して、クレジットの対象企業・事業を公正に評価することが重要と回答している。
https://www.kedglobal.com/carbon-neutrality/newsView/ked202303070019
http://english.korcham.net/nChamEng/Service/Publications/appl/03Detail.asp
Research Institute for Environmental Finance