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東京ガス。千葉袖ヶ浦に、新たにLNG火力発電所建設。29年度稼働へ。国際エネルギー機関(IEA)の新規化石燃料投資一切停止に不整合。「水素混焼」うたうも実現性は不明(RIEF)

2023-07-21 21:48:13

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  東京ガス株式会社は21日、千葉県袖ケ浦市で新たにLNG火力発電所を建設すると発表した。将来的な水素の活用を見据え、水素混焼が可能な最新鋭の高効率ガスタービンコンバインドサイクル発電とするとしている。発電容量は195万kW、最大出力は195万kWで、2029年度の運転開始を目指すという。国際エネルギー機関(IEA)は2050年ネットゼロの達成のためには2021年以降、新たな化石燃料供給プロジェクトへの投資を一切停止し、先進国は2035年までに電力部門のCO2排出を実質ゼロにすること等を求めている。だが、東ガスはそうした国際的な要請への適合性については説明していない。将来の水素混焼についても混焼率等は明示していない。

 

 IEAの「2050年までにネットゼロを実現するためのエネルギーセクター・ロードマップ」では、新たな石油・ガスの開発は認められないとしたうえで、50年にかけて化石燃料への需要が急減することから、石油・ガス製造企業は、その生産を完全に転換すべきと指摘している。排出削減対策のない石炭への需要は、50年までに現状より98%削減、ガスへの需要も55%削減、石油需要は75%削減と試算している。

 

 東ガスが新たに建設するNG火力は、こうした国際的な要請だけでなく、将来のエネルギー需給にも合致しないことになる。同社の計画は、65万kW級の火力を3基建設、合計195万kWの発電量を有する大型発電所の建設だ。25年度までに行政手続きを終えて、着工し、29年以降に発電を開始するとしている。全体が完成すると、一般家庭の年間消費電力換算で約350万世帯分の電気を供給できるとしている。

 

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 投資額は非公表だが、メディアの報道では数千億円規模になるとしている。同社に投融資する金融機関も開示されるべきだろう。天然ガス火力発電は石炭火力よりもCO2排出量は少ないが、化石燃料発電である点で変わりなくCO2は排出される。さらにガス特有のメタン排出もある。メタンはCO2よりも温暖化係数が高いほか、他の有害物質も含んでいる。


 同社では、政府が2021年10月に閣議決定した第6次エネルギー基本計画で、火力発電の今後の在り方として、2050年カーボンニュートラルを見据え、次世代化・高効率化を推進し、脱炭素型の火力発電へ置き換えを推進するとしている点を取り上げ、今回の新規LNG火力を「脱炭素火力」と位置付けている。


 同社は「将来の水素混焼」をうたうが、その実現性については「水素混焼は水素供給網の確立が前提」との注釈をつけている。つまり、水素混焼が実現するかどうかは現時点では「希望」でしかないことになる。そうしながら「今後は、水素のみならず、e-methane、CCS等のあらゆる選択肢の活用を視野に取り組みを加速する」として、水素混焼が実現し、その他の脱炭素技術も実現することを前提としている。

 

 e-methaneもCCSもいずれも脱炭素に資する期待はある。だが、技術的な課題と、経済的課題(コスト)の両方とも、まだ国際的に解消されていない。水素混焼も、CCS等も、技術面、経済面の課題を解消できなければ、導入は見送られるとみられる。そうなると、従来型のLNG火力発電が、人口密集地域の東京湾岸に新たに「lock-in」されるだけ、ということになる。

 

 こうした将来の不確実性を抱えながら、同社は「カーボンニュートラルの実現を見据えたLNG発電事業」と位置付け、ニュースリリースでは「脱炭素」「脱常識」のロゴを付けている。こうした情報発信は、投資家、消費者に、今回のLNG火力投資でネットゼロに向けた「脱炭素化」が本当に推進されるかのような誤解を与える可能性がある。「グリーンウォッシュ・ガス火力」と呼ばれる可能性が高い。

 https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20230721-01.html

https://iea.blob.core.windows.net/assets/7ebafc81-74ed-412b-9c60-5cc32c8396e4/NetZeroby2050-ARoadmapfortheGlobalEnergySector-SummaryforPolicyMakers_CORR.pdf