HOME9.中国&アジア |シンガポール金融管理局(MAS)。昨年初発行の期間50年の超長期グリーン国債、2回目は28億シンガポール㌦(3000億円)。資金使途はトランジションでなく、明確なグリーン事業(RIEF) |

シンガポール金融管理局(MAS)。昨年初発行の期間50年の超長期グリーン国債、2回目は28億シンガポール㌦(3000億円)。資金使途はトランジションでなく、明確なグリーン事業(RIEF)

2023-08-27 11:23:54

MRT001キャプチャ

写真は、グリーンボンドの資金使途先となるシンガポール域内の都市交通(地鉄)の現行車両(日本製))

 

 シンガポールの中央銀行に相当する金融管理局(MAS)は9月4日に、期間50年に及ぶグリーン国債を、総額28億シンガポール㌦(21億米㌦=約3075億円)分を発行する。金利は3.0%。同国は昨年初めてグリーン国債を発行しており、今回は2回目。2030年までに総額350億シンガポール㌦(約3兆8000億円)のグリーン国債を発行し、調達資金は同国のグリーン事業に充当する。日本政府はグリーン・トランスフォーメーション(GX)としてグリーン事業とトランジション事業の両方へのファイナンスを、GX経済移行債(国債)で推進するとしているが、シンガポールはグリーン国債の資金使途は都市交通の改善等の明確なグリーン事業に限定する。

 

 シンガポールのグリーン国債の特徴は期間50年という超長期国債である点だ。長期のグリーンボンド発行としては昨年10月にサウジアラビアのPublic Investment Fund(PIF)が30億㌦分を期間100年で発行したほか、2019年にフランスの公的鉄道の仏鉄道線路事業公社(SNCF Reseau)が同100年、2014年に米ワシントンの上下水道会社ディストリクト・コロンビア・ウォーター社(DCWater)の同100年等がある。https://rief-jp.org/ct6/93406?ctid= https://rief-jp.org/ct6/45369?ctid=

 

 いずれも資金使途先の対象事業がインフラ関係の継続的なグリーン事業が多い。シンガポールの50年債も低炭素・脱炭素に資するインフラ事業に資金を充当する。MASのグリーンボンドフレームワークでは、資金使途先として再エネ、省エネ、クリーン輸送等の8事業を列挙している。セカンドオピニオンはSustainalyticsがICMAのグリーンボンド原則(GBP)等への適合を評価している。

 

 今回のシンガポールのグリーン国債は当初の発行額は18億シンガポール㌦の予定だった。だが、市場の反応が高いことから、10億シンガポール㌦を上乗せし、昨年の発行より多い28億シンガポール㌦の発行額とする。

 

 28億㌦の内訳は、27.5億㌦を機関投資家向けとし、残りの5000万㌦は個人投資家向け(公募)とする。内外の投資家等からの応募は26日時点で39億㌦と発行額を上回っている。このため、利回りは当初の想定より11bps低い3.04%になる見通し。発行日は9月4日で応募期限は29日までとしていることから、発行利回りはさらに低下する可能性もある。

 

  資金使途で中心になるのは、「地鉄」と呼ばれる公共交通機関のマス・ラピッド・トランジット(Mass Rapid Transit  :  MRT)の延伸、拡大だ。MRTは現在6路線が運行中で、新たな路線となるCross Island LineとJurong Region Lineの開発資金をグリーン国債で調達する。引き受け主幹事は、Citigroupのほか、DBS Bank、Oversea-Chinese Banking Corporation (OCBC)、 Standard Chartered、United Overseas Bank (UOB)の各金融機関が担当する。

 

 シンガポールのグリーン国債は昨年が初発行で今回が二回目だが、同国の政府機関は国家環境庁(NEA)が2021年9月にグリーンボンドを発行して以来、これまでにもHousing and Development Board (HDB)、Public Utilities Board (PUB)等がそれぞれの政策領域での低炭素化、脱炭素化のための資金調達で発行している。今回のMASのグリーン国債を含め、公的機関の発行総額は108億シンガポール㌦(1兆1600億円)に達する。

https://www.mas.gov.sg/bonds-and-bills

https://www.mof.gov.sg/policies/fiscal/greenbonds

https://www.mas.gov.sg/news/media-releases/2022/mas-to-launch-inaugural-singapore-sovereign-green-bond-issuance