一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

（写真は、国際エネルギー機関（IEA）のサイトから）

　風力発電事業への需要を示す主力設備のタービンの注文高が、今年上半期はグローバルベースで過去最高の70GWに達した。前年同期比で12%増。全体の6割は中国での需要だが、中国の需要の伸び率は前年同期比でほぼ変わりなく、中国以外の米欧市場が活発化し、非中国市場全体の伸び率を47%増と大きく引き上げた。特にインフレ抑制法（IRA）で再エネ事業補助金を大幅に拡大した米国や、ロシアのウクライナ侵攻でロシアへのエネルギー依存からの脱却を目指すEUでの投資が増大した。日本を含む非中国のアジア諸国の需要は目立った変化はなかった。

　英コンサルタントのウッドマッケンジーが公表した。上半期の70GWの風力発電タービンへの需要は、3年前の2020年に新型コロナ感染症の影響で前期比28%減と大きく落ち込んで以降、3年連続の増加となった。20年同期に比べると2倍以上に増え、コロナ禍での減少を完全にリカバリ―した形となった。

　20年の落ち込みは、特にコロナの打撃が大きかった中国の国内需要が急減した影響が大きかった。その後、中国需要が回復したことに加え、今年は中国の需要はほぼ前年並みだが、米欧の需要が全体の伸びを牽引した形となった。

　非中国市場での風力発電需要は、前年同期比でほぼ5割増の47％増（25GW以上）。これまでのピークだったコロナ感染前の2019年上半期の需要を上回った。米国では昨年成立したIRA法、その前年の21年に超党派で成立したインフラ促進法の両法による政策支援によって、再エネ事業への投資促進が全米規模で展開されたことで、米国を軸にした北米市場全体の需要は前年同期より4倍増の7.7 GWに達した。

　このうち、大規模な洋上風力発電事業2件の需要が全体の49%を占めた。米国市場において、法律施行から1～2年でタービン設備の実注文が発生する迅速さは、日本の再エネ政策・市場にはない米企業の行動力といえる。

　中国市場は20年に全体の5割のシェアを大きく割り込んだ後、3年連続で回復し、今期は44GWと全体の6割を占めた。ただ伸び率は前年同期比でほぼゼロ。中国の受注額は第二四半期が253億㌦、上半期全体では405億㌦だった。

　洋上風力発電向けのタービン発注は前年同期比で26%増大し、12GWと過去最大だった。風力発電全体の17%を占めた。四半期ベースの需要も第二四半期は9.1GWで前年同期比48%増と過去最大規模となった。洋上風力発電では、北米での2640 MWと1176 MWの二つの大規模洋上風力発電事業向けの発注を含めて、新たに事業への投資が決まり、全体のタービン需要を底上げした。

　調査をまとめたウッドマッケンジーのLuke Lewandowski氏は「風力発電事業については、サプライチェーン課題がまだ残っているが、市場環境は投資判断の決定に十分な程度にまで改善している。特に米国市場は、IRAによる政府の投資刺激策が企業の同事業に取り組む決断を促している。今後さらに市場環境の改善が明確に進めば、需要はさらに増大するだろう」と分析・予測している。

　米国のほかEU市場も、ロシアのエネルギー依存からの脱却と、脱炭素での再エネ投資が増大しており、洋上風力発電を軸に、活発な投資需要が高まっている。こうした米欧両市場が上半期のドライバー役となった。中国市場についても、上半期の伸び率はフラットにとどまったが、Lewandowski氏は「中国市場は上半期は伸び率が少なかったが、タービンへの注文は引き続き好調に推移している」と述べており、今後、もう一段の需要増が見込まれるとしている。

　タービンの製造企業別では、風力発電全体では、上半期は中国のEnvision（遠景能源）が9.7GW分の受注でトップに立った。次いで、同じ中国のWindey（遠達）が8.7 GW、3位にドイツのシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー（SGRE）が8.2 GWとなっている。

　第二四半期に絞ると、SGREが洋上風力用のSG 14.X DDタービンの受注が好調で5.9 GWで第一位。次いで中国のGoldwind（金風科技）が4.9GW、Windeyが4.4 GWで続いている。SGREの受注の好調さは、米欧市場を背景としており、Envision、Windey、Goldwind等の中国勢の堅調さは中国市場の回復ぶりを反映しているといえる。

https://www.woodmac.com/press-releases/h1-global-wind-turbine-orders-hit-new-high-at-69.5-gw/