OECDコーポレートガバナンス原則改定。「サステナビリティとレジリエンス」の章を新たに設定。国際基準の情報開示の適用と、移行リスク等への取締役会の責任等求める（RIEF）

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OECDコーポレートガバナンス原則改定。「サステナビリティとレジリエンス」の章を新たに設定。国際基準の情報開示の適用と、移行リスク等への取締役会の責任等求める（RIEF）

2023-09-12 17:09:01

　 OECD（経済開発協力機構）は11日、企業の社会的責任（CSR）のグローバル基準とされる「OECD企業ガバナンス原則」の改定を公表した。同改定はインドで開催したG20（主要20カ国）首脳会議でも了承された。改定の最大のポイントは、「サステナビリティとレジリエンス」について新たな章を設けた点だ。企業に対し国際的な基準と整合するサステナビリティの情報開示の適用や、気候関連の移行リスクや物理的リスクに対する取締役会の責任対応等を盛り込んだ。企業のロビー活動についても、サステナビリティの目標との整合性を求める。

　OECDのガバナンス原則は1999年に発行され、2015年に一度、改定されている。今回の改定はそれ以来の2度目となる。改定作業は2021年11月から、日本の財務省の神田眞人財務官が議長を務める委員会で進められ、今年3月に改定案を完了させていた。すでにOECD加盟各国および金融安定理事会（FSB）等の了承を得ている。

　原則は6つの章から構成される。「有効なコーポレート・ガバナンスの枠組みの基礎の確保」「株主の権利と平等な取り扱いおよび主要な持分機能」「機関投資家、株式市場その他の仲介機能」「開示及び透明性」「取締役会の責任」「サステナビリティとレジリエンス」。

　このうち最後の6章の「サステナビリティとレジリエンス」は、これまで「コーポレート・ガバナンスにおけるステークホルダー（利害関係者）び役割」と題していた章を改める形で新たに導入した。同章では①気候変動やサステナビリティ関連の情報開示②取締役会のサステナビリティ・リスク&オプチュニティへの責務③株主・ステークホルダーの同テーマでの企業との対話の促進等を軸にして、企業の行動基準を示している。

　サステナビリティの情報開示については、「ガバナンス原則のフレームワークは、企業と投資家に対し、企業のサステナビリティとレジリエンスに関連するリスクを判断し、マネージするインセンティブを提供すべき」と指摘。気候やサステナビリティ関連のリスク・オポチュニティ情報と、それに対する企業の取り組み対応を、国際的に信頼できる基準と手法での開示を求めている。

　念頭にあるのは、国際サステナビリティ基準審議会（ISSB）が6月に公表した気候・サステナビリティの両開示基準だ。開示基準の国際共通化を踏まえ、企業は取締役会の責務として、自らの企業のマテリアルなサステナビリティ・リスクとオポチュニティを明確化するとともに、サステナビリティ政策へのロビー活動の点検も盛り込んでいる。取締役会がサステナビリティ課題を考慮する対象としては気候変動による物理的リスクと移行リスクも含めるとしている。

　サステナビリティに関連する企業のロビー活動については、取締役会はそれらの活動が、サステナビリティ関連のゴールや目標と整合する活動であることを確認する必要があると明記したうえで、気候変動目標等と整合しないロビー活動については、取締役会の責務に反するガバナンス違反として位置付けた形となる。今後、エネルギー企業等による、こうした活動の是非が厳格に問われる可能性がある。

　また企業がサステナビリティで重要な判断をする際、株主やステークホルダーとの「対話」を促進することの重要性も示している。「対話」では、企業のビジネス戦略の策定や、マテリアルと判断する際の評価等においての意見交換を含めるとしている。

　機関投資家による投資先企業へのエンゲージメントの促進も掲げ、そのためにスチュワードシップコードの使用の増大を求めている。機関投資家に対しては、受託者としてのガバナンス政策について、投資先企業に対する株主総会での投票権の使用に関する決定手続きを含めて、情報開示すべきとしている。

　議決権行使助言会社や、ESG格付、同データ提供、信用格付、インデックス、アナリスト、ブローカー等の関係機関についても情報開示を拡大し、利益相反を最小化するべきとしている。特にESG格付や同データ提供、信用格付、インデックス、議決権行使等の企業については、その方法論について透明性を確保し、一般にも公開されるべき、としている。