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北海道・石狩新港での大型バイオマス発電所で爆発事故。1人ケガ。燃料の輸入木質ペレットが何らかの原因で過熱化か。相次ぐ大型バイオマス発電の火災・爆発。CO2削減効果にも疑問(RIEF)

2024-07-19 17:49:52

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写真は、北海道・石狩新港のバイオマス発電所の爆発事故を伝えるNHKの報道=7月19日)

 

 北海道石狩市の石狩新港で稼働中の大型バイオマス発電所で爆発事故が発生、作業員1人が手や足にやけどをする事態となった。爆発の影響で発電所建物の一部の屋根が吹き飛び、火災が約2時間40分にわたって起きた。同発電所は、輸入の木質ペレットとPKS(パーム椰子殻)を燃料とし、発電量50.5MWという大規模発電所。昨年3月に稼働した。燃料として貯蔵されている木質ペレット等からの火災は、各地で起きているほか、大規模のバイオマス発電自体の脱炭素効果については、環境NGOなどから疑問が示されている。

 

 爆発事故を起こしたのは、石狩市新港中央2丁目にある「石狩新港バイオマス発電所」。各紙の報道によると、19日午前9時半ごろ、発電所の従業員から、「施設で爆発があり、煙が見える」と消防に通報があった。消火活動の結果、火災はおよそ2時間40分後に消し止められたが、作業員の50代の男性1人が手や足にやけどを負い、病院に搬送された。

 

 発電所を運営する「石狩バイオエナジー合同会社」は建設会社の奥村組(50%)と、九州電力系の九電みらいエナジー(30%)、New Circle Energy(20%)が共同出資している。発電量は51.5MW(51,500kW)と大型。年間発電量は約3.6億kWhで、一般家庭約11万世帯分の電力を供給する。CO2削減効果も、年間約19.2万㌧としている。

 

石狩新港エルギー発電所の全景
石狩新港バイオマス発電所の全景

 

  事業へのファイナンスは、三井住友銀行(SMBC)をリードアレンジャー、りそな銀行がコ・アレンジャーとし、SMBC系の関西みらい銀行が参加するプロジェクトファイナンスで資金を提供した。

 

 同発電所は、奥村組が操業および経営管理、九電みらいエナジーが技術全般をそれぞれサポートする役割としている。今回の爆発事故は、輸入した木質ペレットを地下の貯留槽に搬入していたところ、突然爆発が起きたとされる。バイオマス発電では、ペレットから生じる粉じんが、ベルトコンベアなどの摩擦熱をきっかけとして発火し、爆発につながるケースが多い。また、長期間保管していると、常時発生する粉じんが自然発酵で発火するケースもあるという。

 

 最近では昨年9月に鳥取県米子市にある中部電力のバイオマス発電所が爆発事故を起こし、木質ペレットを受け入れる建屋の鉄骨の壁が吹き飛び、貯留タンク(サイロ)にペレットを運ぶための昇降式搬送装置(バケットエレベーター)も損傷する事故を起こしている。また、今年1月には、バイオマス混焼発電にペレットを使う、JERAの愛知県武豊町の武豊火力発電所でも爆発事故を起こしている。

 

石狩新港バイオマス発電所での消火活動の様子(NHKニュースから)
石狩新港バイオマス発電所での消火活動の様子(NHKニュースから)

 

 NHKの報道では、経済産業省のデータとして、2019年以降、福岡、愛知、茨城県などで合計11件の爆発・火災事故が発生しているという。事故多発を受けて、同省は今年2月、事業者に対して、ペレットなど燃料の貯蔵や運搬の設備での点検や清掃など、安全対策の徹底を要請したとしている。

 

 わが国で爆発事故が頻繁に起きるバイオマス発電所の多くは、東南アジアや米国などからの輸入木質ペレットやPKSを燃料としている。輸入に都合がいいように、港湾部に大型の設備を建設するわけだ。また発電効率を高めるため、発電設備を大型化する傾向にある。しかし、燃料のバイオマスは「木くず」なので、大量に保管すると搬送過程等で、今回のように発火しやすい欠点がある。

 

 バイオマス発電は再エネ発電に分類される。だが、木質ペレットやPKSを製造する海外の拠点では、元あった森林を皆伐して、モノカルチャー型のパーム椰子植林に切り替えるなどで燃料化している。このため、元の森林や土壌に蓄えられていた炭素量が放出されるほか、植林期間のCO2吸収量は、元の森林の吸収量に及ばない点も問題視されている。

 

 国内森林の間伐材を使ったペレット等を燃料とする小規模バイオマス発電に比べ、輸入ペレット等に依存する大型バイオマス発電所の場合、実質的なCO2排出量は、従来の火力発電とあまり変わらないのが実態とされる。つまり、バイオマス発電は「再エネウォッシュ」の懸念が強いうえ、爆発・火災事故を起こし易く、危険性の高い発電施設なのだ。日本政府の再エネ政策の「いびつさ」の象徴の一つともいえる。https://foejapan.org/issue/20220628/7848/

 

https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20240719/7000068549.html

https://www.okumuragumi.co.jp/newsrelease/2023/post-36.html