JERA。電力卸売市場での余剰電力供出を4年半も見送り。うち3年間で約54億kWhの売却回避で市場価格を高止まりさせる。電力・ガス取引監視委が「相場操縦」の疑念で改善勧告(RIEF)
2024-11-18 03:01:33
(写真は、JERAの本社=同社のLinedInより引用)
日本最大の火力発電会社であるJERAが、卸電力取引所の翌日市場(スポット市場)で、市場支配力の強い電力会社として、余剰電力を市場に供出することを義務付けられているのに、昨年10月までの約4年半にわたり一部についてそうしなかったとして、電力・ガス取引監視等委員会から「市場相場を変動させることを目的とした取引に相当する」として、業務改善勧告を受けた。これに対してJERAは、「社内の体制・ルール整備や教育・研修等に不備があったことに起因する」として、「利益を享受する目的で相場操縦を行う意図はなかった」と言い訳をしているが、大手電力会社が市場機能を「無視」し続けたことの影響は大きい。
同委員会によると、市場支配力の強い既存電力会社等は、余剰電力が生じた場合、卸売市場のスポット市場への供出を義務付けられている。ところが、JERAは2019年4月以降、昨年10月までの4年半にわたって、東京エリアのスポット市場への余剰電力供出量の算定に際し、停止する発電ユニット出力の一部で出力制約が起きた場合を含め、一律にスポット市場への「供出不可」として入札量を設定し、市場へ未供出の状態を続けていたという。
同委は、その結果、余剰電力を想定通りに市場に供出していれば、2020年10月から23年10月までの約3年間だけでも、約54億kWhの売り入札が追加され、そのうち約6億5000万kWhの売り入札が約定していた可能性がある、と指摘している。 JERAが余剰電力を一律に供出しなかったことにより、この間、電力価格は高止まりを続けたことになる。同委が、どれくらい市場実勢より高くなったかを試算したところ、2021年11月の事例では、予定通りの供出があれば市場価格は50円/kWh以上下がっていた可能性があると指摘している。
委員会がJERAの余剰電力の扱いについて懸念を深めたのは、同社が東京電力(東電フュエル&パワー)から火力発電事業を引き継ぐ前の2016年6月には、余剰電力の供出に際して、ブロック入札の時間帯毎の入札量を可変させる「スマートブロック機能」を導入しており、停止する発電ユニットが生じる場合は技術的・物理的制約がない限り、余剰電力を供出できる仕組みをとっていたこともある。同機能は、JERAが火力発電を引き継いで以降、委員会から指摘されてシステム改修をするまで使われず、結果的にその間の市場価格を引き上げる要因になっていた。
委員会の調べでは、こうしたJERAの余剰電力の取り扱いについては、JERA内部でも複数の職員から問題視する声が上がっていたという。また同社の中部エリアでは、同様のケースでは余剰電力を供出しており、同社の社内規程でも「余剰電力の全量をスポット市場に供出すべき」と明記している。こうしたことから同委は、JEERAが東京エリアで、長期にわたり余剰電力の供出をしなかったことは、公正取引委員会と経済産業省による「適正な電力取引についての指針」が定める「市場相場を変動させることを目的として市場相場に重大な影響をもたらす取引を実行すること、または実行しないこと」に該当するとしている。
同委は電気事業法に基づき、こうした行動をとってきたJERAに対して業務改善の勧告を出した。それによると、①スポット市場入札での同社のプロセスを総点検し、本来の需給関係によらずに相場を変動させ得ると考えられる箇所を特定、システムの改修やマニュアルの改定等適切な措置を講ずる②再発防止のため、卸電力取引に関する法令遵守、コンプライアンス管理の実効性確保の計画を実施する。同計画には(a)社員が社内で容易に相談・問題提起・通報できる体制の整備と社内風土の醸成(b)社内ルール遵守のための確認、牽制体制の構築(c)法令遵守、コンプライアンス管理のための情報共有、教育及び研修の実施等を盛り込む③同計画を12月12日までに文書で報告ーーとしている。
こうした委員会の指摘と勧告に対して、JERAは「社外専門家も起用して本事象に関する社内調査を行った結果、本事象の直接の原因は、入札量算定に用いるツールの設定不備によるものであり、本事象が長期間にわたり継続したのは、当社の体制・ルール整備や教育・研修等に不備があったことに起因すると考える。利益を享受する目的で相場操縦を行う意図はなかったことを確認している」と委員会の指摘に反論するプレスリリースを公表した。
ただ、委員会の勧告には「同事象が長期間にわたり継続したことを重く受け止めるとともに、業務改善勧告の内容を真摯に受け止め、再発防止に努める」ともした。
仮にJERAの言い分通りだとしても、委員会の指摘をうけるまで、4年半も「ツールの設定不備」を続け、内部の社員からの声も無視してきた事実は、明らかに社員を対象とする「教育・研修等の不備」によるものではないだろう。同社の経営層のガバナンスの欠如か、あるいは、本当に、「見つかったら改修すればいい」という意図を持った相場操縦策だったのかもしれない。
何よりも、JERAの「相場操縦」期間中に市場取引に参加した新電力各社等に、コスト高の市場価格を強いたことで、電力取引全体の信頼性を損ない、多くの市場参加者に経済的損失を与えた「罪」は大きい。
https://www.meti.go.jp/press/2024/11/20241112001/20241112001.html
https://www.jera.co.jp/news/information/20241112_2052

































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