三井物産出資のデンマークでの「e-メタノール」開発企業、初の大規模商業供給を開始。同国の海運最大手のA.P. モラー・マースク等に供給。水素、アンモニアよりも安定と(RIEF)
2025-05-13 23:01:14

(写真は、デンマークで操業を開始した三井物産出資の「e-メタノール」製造工場=EE社から引用)
三井物産がデンマークの「ヨーロピアン・エナジー(EE)」と共同で運営する合成メタノール製造会社は13日、初の大規模商業用「e-メタノール」の供給を開始したと発表した。e-メタノールは、太陽光発電によるグリーン水素と、バイオ由来の二酸化炭素(CO2)を原料にした化学・触媒反応で合成した液体燃料。CO2排出量は最大97%削減できるとされる。今回、製造したメタノールは、海運最大手のA.P. モラー・マースクのほか、玩具のレゴ・グループ等の北欧の低炭素化推進企業に供給する。
今回、e-メタノールの販売を発表したのは、EE社傘下の「ソーラーパーク・カッソ(Kasso MidCo ApS)」社。三井物産は2023年7月にEEからカッソ社の株式49%を取得した。同社はこれまでも100%子会社の太陽光発電会社の電源を使い、メタノール事業を展開している。生産能力は最大年4.2万㌧。
カッソ社によるe-メタノールの製造手順は、まず、同社が保有する出力304MWの太陽光発電設備で発電したグリーン電力を使った水電気分解でグリーン水素を製造する。次に、同水素とバイオ由来で回収したCO2を化学反応させ、e-メタノールを製造する。今回の規模での商業生産は過去最大としている。
e-メタノールの買い手は、デンマークの主要企業の海運大手A.P.モラー-マースク、玩具大手レゴ、医薬品大手ノボ・ノルディスク社等。化石燃料に代わる次世代燃料には、水素、アンモニア等の開発も進むが、三井物産は「製造、運搬、保管」などを含め、「グリーン水素やクリーンアンモニアが使用しづらい面もあり得る中で、e-メタノールが一つの『現実解』と考える」としている。A.P. モラー・マースクは、カッソで社のe-メタノールを、コンテナ船「Laura Mærsk」の燃料として使うとしている。
三井物産は昨年、米テキサス州で大手化学会社セラニーズ社(Celanese Corporation)と折半出資による「フェアウェイメタノール社(Fairway Methanol LLC)で、周辺工場から排出されるCO2を原料としたメタノールの製造を始めている。今年2月には米Twelve社、4月には同Infinium Holdings, Inc.と、いずれも合成燃料(e-Fuel)の開発企業に投資しており、合成燃料開発に力を入れている。
EEのCEOのKnud Erik Andersen氏は「カッソでの操業開始は、Power-to-X技術を現実の用途に導入する重要な一歩。これは再エネ技術の実際の活用であり、電気の使い方を変革するものだ」と強調している。三井物産専務執行役員の古谷卓志氏は「当社は、グローバル・エネルギー・トランジション戦略の一環として、製品バリューチェーン全体での統合的なアプローチを促進するこの先駆的なプロジェクトにおいて、重要な役割を果たすことを光栄に思う」と述べている。
https://europeanenergy.com/2025/05/13/kasso-e-methanol-facility-officially-inaugurated/
https://www.mitsui.com/jp/ja/release/2023/1246816_13866.html