日本を含むアジア諸国のCCS事業はGHG除去とは逆に、2050年までに250億㌧の追加排出となる可能性。日本は「化石燃料産業保護のためのCCS」の典型。独非営利シンクタンクが分析(RIEF)
2025-10-06 07:00:13
日本を含むアジア諸国で計画・推進されているカーボン回収貯留(CCS)の事業がアジアで全面的に展開されると、2050年までに250億㌧の追加的な温室効果ガス(GHG)の排出が生じる可能性があるとの分析が示された。ドイツ拠点の気候科学・政策分析の非営利の国際シンクタンク「Climate Analytics」による。特に日本、韓国、オーストラリアでこうした追加的な排出増となる可能性が高いとしている。CCSでGHG排出を吸収できるとして、本来とるべき排出対策をおろそかにして事業活動を展開するためだ。同機関は特に日本のCCS事業法に言及し、再エネ等の代替手段があるのに、化石燃料発電等をCCSの対象に含めているとして、「化石燃料産業の保護のためにCCS政策を展開しており、パリ協定の目標と整合しないだけでなく、自国経済に対しても『甚大かつ不必要なリスク』をもたらす可能性がある」と警告している。
分析の対象は、アジアおよび同地域で最大かつ/または最も影響力のある経済国、エネルギー消費国、GHG排出国である中国、インド、日本、韓国、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、アジアの多くの国々と化石燃料貿易とCCS計画で連携しているオーストラリアを対象とした。対象国を合わせると、世界のGHG排出量の半分以上を占める。
国際エネルギー機関(IEA)のNZEシナリオ(1.5℃目標シナリオ)は、CCSによる CO2回収量は2030年までに約10億㌧、2050年までに数十億㌧に達すると予測している。しかし、グローバルに現在稼働中のCCS設備の総処理能力は年間わずか5000万㌧であり、世界の年間CO2排出量の約0.1%でしかない。2023年時点で計画中または開発中の全CCS施設が稼働した場合でも、2030年までに回収できるのは年間0.25GtCO2に留まると推計されている。
このうち、アジア地域(オーストラリア・太平洋諸国を含み、ロシア・中東を除く)では156件のCCSプロジェクトが計画中だが、現在稼働中のものは18件にとどまる(4件が過去に中止)。建設中のものは10件で、残りの 128 件(全体の 82%)は計画段階。アジアで稼働中のCCSプロジェクトの現在の最大処理能力は年間7.54 MtCO2であり、3件(日本1件、オーストラリア2件)を除く全てが中国に所在する。
提案中のアジアCCSプロジェクトが全て稼働した場合、最大処理能力は年間171 MtCO2となる計算だ。これ以外にも計画段階のCCS事業は150プロジェクト以上ある。これらの多くはCCSの活用政策について「削減が困難な」部門の排出削減支援のためとしている。しかし報告書は、日本や韓国を含めたアジアのCCS計画は気候以外の事項を優先していると指摘。最も明白なのは、化石燃料の持続的活用と収益維持、化石燃料に関連したエネルギー安全保障などの戦略的懸念に基づいているとしている。

これらの国々のうち日本については、この分野で特に影響力を持つアジアの推進国と位置付け、国内外のCCS事業に対して多額の資金支援と規制上の優遇策をとっていると分析。日本政府がGX政策で9件のCCSプロジェクトに直接資金支援を行っていることを紹介している。
ただ、日本のこれらのCCS事業支援の根拠法である「2024年CCS事業法」については、排出削減が困難な分野におけるCCSの必要性に言及しながら、この定義の対象に「電力」と「モビリティ(自動車)」を含めている点に疑義を示している。なぜなら、化石燃料発電の代替エネルギーとしては、再エネ発電、蓄電池、電化が費用対効果の高い排出削減のための代替手段として存在しているのに、そうした現実を無視していると述べている。https://rief-jp.org/ct5/145798?ctid=
日本の第7次エネルギー基本計画も「石油精製」及び一部の輸送部門(大型トラック、航空機、船舶)をCCS対象候補として挙げている。「日本の特異な気候計画は、CCSの主張を誇張している。日本の計画は、電力システムから『非効率な石炭火力』のみを段階的に廃止することが含まれており、これは再エネと電化が日本の状況に適さないとする(日本政府の)継続的な懐疑心を反映している」と指摘。
そのうえで、日本がそのような再エネ・電化に背を向ける政策をとるのは「そうしないと、中国がすでに生産を支配している技術に、エネルギー市場のシェアを譲ることになるという危惧があるためだ」と、日本政府の政治的姿勢を評価している。

報告書は日本や韓国のCCSに対する政治性を指摘したうえで、アジア諸国が、ハイレベルなCCS経路を達成するものの、導入されたCCSの設備容量が低パフォーマンスの場合と、アジア諸国がCCS導入の高水準を追求しても最終的に目標を達成できない場合に分けてリスク分析を行っている。それらの分析の結果、リスクの高いCCS技術を全面的に導入した場合、2050年までに追加で250億㌧の排出増加が発生する可能性がある、との試算結果を示した。
CCS導入が、本来の目標に反する結果になるリスクがあるのは、化石燃料産業と一部の国の政府が、CCSを有効な緩和策として推進しながらも、技術的・経済的両面の課題からこれまで想定通りのCO2吸収が実現できず、さらに継続的な失敗、低い回収率、高コスト等の課題を解消できないためとしている。むしろ、CCSを導入した化石燃料エネルギー・産業施設は、貯蔵と電化を組み合わせた再エネ発電等の、より経済的で安価かつ持続可能な緩和策に対して競争力を失いつつある、と結論付けている。
報告書の筆頭著者で同機関アナリストのジェームズ・ボーエン(James Bowen)氏は「アジア諸国が2050年までCCS支援を拡大する可能性は高い。これにより化石燃料の排出抑制が進まず、資産が陳腐化するリスクが生じるだけでなく、パリ協定の1.5℃温暖化目標達成が危ぶまれる」と懸念を示している。
同機関のCEOのビル・ヘア(Bill Hare)氏も「アジアは岐路に立っている。これらの国々はまだ大規模なCCS路線を選択していないものの、多くの国が化石燃料産業保護のためにCCS政策を調整している。特に日本、韓国、オーストラリアではそれが顕著だ」と述べている。
(藤井良広)
https://drive.google.com/file/d/1XbG9bCO91XIei80ZbevHyM1F7lgnV5fh/view
https://drive.google.com/file/d/11Wzh3qTATS3d-V_TvBmx9moMVU_blVFp/view

































Research Institute for Environmental Finance