IIGCC、責任投資原則(PRI)、セレスの3投資系NGO。英、EU、カナダ、豪の規制当局に対し、財務諸表で気候変動の不確実性への言及不足への対応求める。日米には求めず(?)(RIEF)
2025-12-17 23:20:43
気候変動に関する機関投資家グループ(IIGCC)、責任投資原則(PRI)、セレス(Ceres)の米欧の大手投資系NGO団体は、英国、EU、オーストラリア、カナダの規制当局に対し、現行の財務諸表において気候変動に関する不確実性への言及が不足していることへの投資家の「懸念」を表明、対応を求める書簡を送付した。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の気候・サステナビリティ情報開示基準の開発・普及の一方で、これらの気候関連情報は企業の財務諸表にはそのままでは反映されないことから、各規制当局に対して、企業の財務諸表において気候変動の不確実性を反映できるような措置を設けることを求める共同書簡を、直接送付した。
IIGC等が気候変動の不確実性について財務諸表での対応措置を求める書簡を送付したのは、欧州証券市場監督機構(ESMA)、英国財務報告評議会(FRC)、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)、カナダ証券監督当局(CSA)の4当局。米国の証券取引委員会(SEC)や日本の金融庁は送付先から除外されている。
トランプ政権下のSECは気候情報開示自体を棚上げしており、投資系NGOは、SECが財務諸表に気候関連の不確実性を反映させる対応はとらないとみられることから、書簡の対象外にしたと思われる。日本については、金融庁が2027年3月期から有価証券報告書で、対象企業を限定して気候情報を含むサステナビリティ情報を開示する規定を整備中であることを踏まえた可能性もある。https://rief-jp.org/ct4/158779?ctid=
今回の当局へのアクションを主導したIIGCCは、2020年11月に、気候変動要因が財務報告に及ぼす影響を無視するリスクと、その統合が持続可能で気候変動に強い経済成長にどう寄与し得るかを分析するため、パリ協定に沿った気候変動対応をどう財務諸表に反映させるかについての初の投資家期待を示す報告書を公表している。今回は5年ぶりに同報告書を更新し、企業と監査人が気候変動の財務的影響を、重要な将来を見据えた会計上の仮定・見積り・判断に統合することへの期待を示した。
今回の報告書の更新・改定は、2020年以降、EUの義務的企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の施行や、ISSBのサステナビリティ情報開示(S1)、気候関連開示(S2)などの非財務情報開示の枠組みが整備され、財務諸表のルール化を進める国際会計基準審議会(IASB)も、気候関連リスクの財務諸表での扱いについての事例を公表。ESMAや英FRCなどの規制当局は、気候関連財務開示を主要な執行優先事項として特定する、などの動きが出ていることなどを踏まえて実施した。
改定版では、規制当局および監督当局に対して、気候関連財務開示に関する要件を強化し、企業の年次報告書の前半部分(戦略、リスク、目標、シナリオ分析)と後半部分(注記を含む監査済み財務諸表)の一貫性(または「連結性」)を確保する必要性を強調している。また一部の企業と監査人は、気候リスクと移行リスクを財務諸表と監査に組み込み反映し始めているが、その手法に関する詳細な情報と定量的開示が不十分等としている。
そこで、5年前の投資家期待の基礎原則を踏まえつつ、その後環境が変化したことを認識した上で、今回の更新版の報告書を作成したとしている。その概要としては、基準設定機関による最近のガイダンス、規制動向、新たな投資家慣行を踏まえ、当初の期待を再確認するとともに、その内容を精緻化し拡大している。
さらに気候情報開示に関する次の3つの主要ステークホルダーグループへの明確な期待を示している。
①「企業」は財務諸表における気候影響の考慮を示すこと、記述的気候報告との整合性を確保すること、主要な気候関連の前提を開示すること、シナリオ感応度分析を提供すること、および潜在的な配当への影響を考慮する。
②「監査人への検証要求」。気候リスクの監査への組み込みを確認し、気候関連記述開示と財務前提の一貫性を評価し、重要性が認められる監査事項において気候要因を強調し、感応度分析を批判的に検証する。
③「監査委員会への監督要求」。財務報告における気候リスク統合を監督し、経営陣の気候関連重要性評価を保証し、前提条件を厳格に検証し、配当と事業継続性への影響を評価する。
報告書に基づく共同書簡では、重要な気候関連リスクが「主要な会計上の判断に影響を及ぼす可能性がある」と説明している。これには、炭素集約型または気候変動の影響を受ける資産が減損するか否か、あるいは資産が減価償却される見積耐用年数の扱い等が含まれる。
また、脱炭素化の移行関連政策により、化石燃料関連企業の場合、化石燃料関連資産を予想より早期に廃止する必要が生じると、当該企業の貸借対照表上の引当金が増加する可能性が高まることにつながる。さらに「(企業活動において)重要性が認められる場合、投資家はこうした考慮事項が財務諸表にどのように反映されているかを理解し、投資判断やスチュワードシップ決定の根拠とすべきである」と述べている。
しかし、ISSBなどの取り組みが進捗する一方で、企業の財務情報開示においては気候変動関連の不確実性を把握するには、依然として不十分な概要にとどまっているとの懸念を示している。2024年のカーボントラッカーによる分析では、Climate Action 100+の重点対象企業52社のうち過半数が気候リスクに関する実質的な財務開示を欠いていたほか、ほとんどの企業の監査報告書は気候への考慮が限定的であることなどを紹介している。
書簡は規制当局に対して、財務諸表での開示取り組みに加えて、各当局が「影響を受けやすい企業の報告をどのように監視するか」「気候変動などの不確実性が重要であるにもかかわらず、IFRS会計基準で要求される財務報告で対応されていない企業にどのように関与するか」「これらが成功しない場合の潜在的な監督措置をどうとるか」等、企業に対する監督取り組みの強化も求めている。
さらに、規制当局は、監査人に対しても、引き受けた企業の財務報告が、気候情報などを確実に反映させる義務があることを、再認識させるべきだと述べている。
(藤井良広)

































Research Institute for Environmental Finance