HOME |チェルノブイリ原発周辺の「立ち入り制限地区」で、世界最大級の太陽光発電所建設計画浮上。米加の投資会社らと調整中。EBRDも関心を示す(RIEF) |

チェルノブイリ原発周辺の「立ち入り制限地区」で、世界最大級の太陽光発電所建設計画浮上。米加の投資会社らと調整中。EBRDも関心を示す(RIEF)

2016-08-04 12:08:58

chelnobyly2キャプチャ

 史上最悪の原発事故となったウクライナのチェルノブイリ原発周辺は、現在も高濃度の放射線物質で汚染された広大な立ち入り制限区域が広がる。この汚染地域に、世界最大の太陽光発電所を建設し、蘇生させる計画が浮上しているという。

 1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故では、周辺に拡散した高濃度放射性物質の影響で、1600平方マイル(約4144㎢)の広大な土地が今も「立ち入り制限区域」となっている。

 Chelnobylyキャプチャ

 しかし、ウクライナの環境大臣のOstap Semerak氏は、同地での太陽光発電事業の計画の可能性を明らかにした。報道によると、2つの米投資会社と4つのカナダのエネルギー会社が関心を示しているという。発電規模は最終的に4GWに及び、世界最大の太陽光発電事業になる。

 また欧州復興開発銀行(EBRD)も「しっかりした投資計画ならば、プロジェクトへの参画も検討する」と前向きなスタンスを示している。EBRDはこれまで同原発を封じ込めた石棺の劣化対策で、原発全体を鋼鉄のアーチで覆う事業に5億㌦を拠出している。

   Semerak氏によると、同計画の「有利な点」は、チェルノブイリ原発の既存の送電線インフラがあることだという。立ち入り制限地区の土地はほぼタダ同然に安く、パネルを敷き詰めれば、発送電が可能になるという。また電力事業の労働者にも事欠かない。

 もし、実現すると、史上最悪の産業事故の一つであるチェルノブイリの被災地域が、太陽光発電技術によって死の淵から蘇ることになる。原発をめぐっては稼働中に温室効果ガスを排出しないことから、国際エネルギー機関(IEA)などはクリーンエネルギーとみなしている。だが、チェルノブイリや東京電力福島原発の現実を見れば、「もっともダーティーなエネルギー」であることは疑いようがない。

 

 その放射能汚染サイトを、世界最大の太陽光発電所として蘇らせることができたならば、人類の英知にはまだ捨てたものではない、という証明にもなるだろう。だが、放射能汚染地での太陽光パネル等の設置工事の安全対策や、設立後のメインテナンス等をしっかり行えるのか、という課題が立ちはだかる。

 

 想定されているのは建設期間を6か月単位とし、地区を絞って集中的に発電所を順次、建設していく方法という。作業労働者は放射能防護服を着て作業することになりそうだ。当面は1GW規模までの建設を目指す考え。現在の市場平均では、1GWの太陽光発電の建設には10億~15億㌦の資金が必要とみられる。

 

 1GWの太陽光発電所は、インドやUAEなどのいくつかの国で計画が進められている。ただ、まだ完成したところは一つもない。チェルノブイリでは、最終的にその4倍まで発電能力を拡大することが可能というわけだ。

 

 ウクライナのエネルギー資源では石炭と天然ガスが豊富。しかし化石燃料の使用は温暖化対策で次第に制限されていくことから、2030年には、再生可能エネルギー設備容量シェアの10%達成と、原子力発電シェア50%を目標に掲げている。「チェルノブイリでの4GW規模の再エネ発電」が完成すると、電力のEU向け輸出なども可能になってくる。

 

 

http://www.ebrd.com/news/video/chernobyl-investing-in-solar-power.html