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原発建設が不正資金づくりの「舞台」に。ブラジルの「原発の父」が不正に関与し、懲役43年の判決。公務員、政界への賄賂資金ねん出(RIEF)

2016-08-08 11:09:26

Bragilsilverキャプチャ

 

  リオ五輪が始まった。そのブラジルでは弾劾裁判で職務停止となったジルマ・ルセフ大統領の不正・汚職摘発が続き、同国の原発事業が不正資金ねん出に利用されていたことが明るみに出た。事件に絡んで同国の「原発の父」とされる人物が検挙され、裁判所から懲役43年の有罪を宣告された。

 

 有罪を宣告されたのは、ブラジル最大、中南米でも最大の電力会社Eletrobrasの100%子会社であるEletronuclear社の前CEO、シルバ(Othon Luiz Pinheiro da Silva:写真)容疑者。同容疑者はブラジルの原発開発に長く関わって来たことで知られる。

 

 現在、ブラジルで追及されている汚職事件では、Eletrobrasに対して、ルセフ大統領の選挙参謀が水増し請求を行い、数百万㌦の賄賂資金を得た疑いが発覚している。その資金が2014年のルセフ大統領再選資金に流れたとされる。検察当局は「洗車捜査作戦」と名付けた捜査を継続中だ。

 

 シルバ容疑者への容疑も、一連のEletrobrasの不正疑惑に関連している。リオデジャネイロ裁判所によると、シルバ容疑者は同国の大手エンジニアリング会社のAndrade Gutierrez とEngevix の2社の経営者と共謀し、ブラジルで3番目となる原発のAngra 3の建設を巡って、水増し請求やキックバック等を仕組んで不正資金のねん出工作に関与していたという。

 

Angra3キャプチャ 

 Angra 3原発は、1975年に許可されドイツのシーメンスが設計した「第二世代」に属する古いタイプの加圧水型(PWR)原発。発電容量は1405MWe。1984年に建設に着手したが、70%ほど建設した2年後に中断、その後、ほぼ20年間たなざらし状態になっていた。

 

 ブラジル政府は、2008年にフランスのアレバ社に改良を含めて建設を引き継いだ。2010年に建設が再開され、15年に完成する予定だったが、今はさらに18年まで延びている。建設費用は公式には47億㌦。

 

 長期間の空白から、急遽、別会社との契約、建設再開という流れの中で、原発建設の入札制度を利用して、水増し請求や資金洗浄などの不正工作が行われたとみられている。

 

 見方を変えると、シルバ容疑者や政権関係者らは、不正資金ねん出のために、たなざらし状態の原発の建設再開を決断したのかもしれない。つまり原発Angra3は電力を作り出すよりも、賄賂資金を作り出す「舞台」というわけだ。

 

 シルバ容疑者はブラジルの原子力開発に長くかかわってきたほか、ブラジル海軍の副司令長官を務めるなど、軍にも影響力が強い。軍需物資の調達でも同様の水増し請求やキックバック等が行われていた懸念もある。

 

 原発のような大型プラントや、軍事品調達などの場合、政府や公益事業の発注元が一般競争入札をとらず、特定企業の実績を評価する指名入札をとるケースが多い。それは同時に、今回のような汚職の温床を育むという課題もある。

 

 今回のブラジルの事件では、そうした不正を監視する公務員等も巻き込んでいる。したがって今回のような政変が起きない限り、発覚は容易ではない。日本の場合はどうか。原発建設、行政の許認可、監視等において、不正の介入を排除する十分な透明性が確保されているかどうか。他人事ではない。

http://ethixbase.com/eanews/brazil-brazil-eletronuclear-ceo-gets-43-year-sentence-corruption-paper/