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世界全体のサプライチェーンリスクを地図上に視覚化。日本・ノルウェーの研究者が「絶滅リスク地図」を作成(各紙)

2017-01-05 19:43:18

nihonキャプチャ

 

  日本や欧米諸国等の先進国での消費のための輸入品が、途上国の、どの地域の、どの種の生態系を絶滅の危機にさらしているかを、地図上に視覚化した論文が発表された。われわれの食卓にのぼる豆腐やコーヒー豆など日常品の消費が、どの国の生態系破壊を引き起こしているかが一目瞭然に図示される。

 

 この輸入品に潜む「野生絶滅リスク」の視覚化に成功したのは、信州大学の金本圭一朗教授と、ノルウェー大学の Daniel Moran教授の共同研究。米科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に掲載された。

 

 金本教授らの研究は、国際自然保護連合(IUCN)が公表する「絶滅の恐れのある生物種のレッドリスト」と、BirdLife Internationalが作成した絶滅危惧種の生息範囲を示す地図を元に、生物多様性が危機にさらされている地域(ホットスポット)を特定し、世界187 カ国での 1 万 5000 以上の財・サービスと消費者とを結ぶサプライチェーンルーツを地図上で「見える化」を図った。

 

 この視覚化地図と、世界経済モデルでの特定の国で最終的に消費された財・サービスの生産活動の流れを組み合わせることで、各国の消費活動が、輸入元の国の生態系にどの程度影響しているかを推計した。ホットスポットについては、約 7000の 生物種ごとに可視化し、その図を重ね合わせた。

 

 これらの地図をみることで、生物多様性を脅かす数百種類もの消費者向け製品がもっとも売られている市場を特定することができる。地図上では、絶滅の危機の 値が高い地域ほど、図を暗い紫色(陸域)、黄色(海域)で表示する工夫をしている。

 

 例えば、豆腐の原料である大豆や、コーヒー豆を栽培するため、インドネシアのスマトラ島やブラジルのマトグロソ州では森林が広範囲にわたって伐採され、希少な野生動植物が生息環境だけでなく、生育環境を奪われ追い詰められていることがわかる。

 

 食料品だけではない。米アップルのスマートフォン「iPhone」やスウェーデン大手イケアの家具のように、世界的に展開されている工業製品にも、野生動植物種の減少につながるリスクが隠れている。生態系破壊の影響が大きいのは、特に東南アジア地域だという。

 

 こうした地図を活用することで、世界各地の生物多様性を保護するには、開発国だけでなく消費国の責任も大きいことが明確になる。これらの情報を国際的に共有することで、各国政府や企業による生物多様性の保護政策がより効率的なものとなることが期待できる。

 

 金本教授は、この手法によって、ある国の特定の動植物種が別の国で消費される製品によってどれだけ脅威にさらされているのかを数値化し、パーセント表示できると説明。生物多様性が脅かされている「ホットスポット」の大部分は、ごく少数の国々にその原因があるという。そして、今回の研究結果を通じて生産者と消費者が直接協力する体制が築きやすくなるとの見方を示した。

http://www.shinshu-u.ac.jp/topics/2017/01/post-160.html