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トランプ米大統領 オバマ前政権が推進した石炭火力発電所のCO2規制「クリーン・パワー・プラン(CPP)」廃止の大統領令に署名。「パリ協定」取り扱いの焦点は来週の米中首脳会議に(RIEF)

2017-03-29 14:30:37

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 トランプ米大統領は28日、オバマ前政権が地球温暖化対策のために導入した石炭火力発電所のCO2排出規制「クリーン・パワー・プラン(CPP)」を停止する大統領令に署名した。CPPは米国がパリ協定で国際公約した温暖化ガス排出削減目標達成の中心政策で、CPPの廃止は事実上、パリ協定の合意の“放棄”を意味する。トランプ大統領は来週、中国の習近平国家主席と会談する予定で、米中が温暖化政策で対立するか、それとも中国も方針転換するか、注目される。

 

 トランプ大統領がCPP廃止の大統領令に署名する方針は、すでに本サイトで伝えていた。http://rief-jp.org/ct4/68662?ctid=70。 この日、大統領は環境保護庁(EPA)を訪問、温暖化否定論者で知られるプルイットEPA長官の見守る中で、大統領令に署名した。署名した大統領令は「Promoting Energy Independence and Economic Growth(エネルギー政策の独立性と経済成長の促進策)」と題した内容。

 

 大統領令はこの大統領令の目的として、米国内のエネルギー資源の利用を促進するため、経済成長と雇用を阻んでいる現行の過剰な規制負担を取り除く点にある、としている。さらに国内の自然資源を適切に活用することは、国家の地政学的安全保障の確保にとって重要、と指摘している。

 

  CPP関係での廃止の対象は、オバマ大統領が2013年11月に発出した「気候変動の影響への備え」を求めた大統領令をはじめ、同年6月の電力向けのCO2排出基準など3本の覚書、CO2とメタン排出削減の気候行動計画のレポート2本が対象となる。さらにEPAに対して、CPP関係のあらゆる規制やガイダンスなどをレビューし、停止、改変、取り消しの判断をするよう指示している。

 

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 CPPに基づく州法による石炭火力規制をめぐっては、プルイット氏が司法長官を務めていたオハイオ州などが訴訟を提起し、現在、最高裁で預かりの形になっている。今回の大統領令は裁判所を含む訴訟関係者に対して、今回の大統領令を迅速に周知するよう求めている。さらにオバマ政権が温暖化の社会的な影響を評価するために設けてきた関係官庁横断的な「Interagency Working Group on Social Cost of Greenhouse Gases(IWG)]について、組織の解散と、IWGが公表してきた分析資料等の回収を命じている。

 

 EPA等の関係官庁は、これらの大統領令に即した対応策の案を、45日以内に、行政管理予算庁(OMB)と副大統領等に対して提出し、180日以内に最終計画をまとめることになる。

 

 CPPについては、連邦議会で制定したものではなく、オバマ前大統領の大統領令に基づくもの。なので、今回のトランプ大統領の撤回指示も、先にトランプ政権が”一敗地”にまみれた医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案とは異なり、議会承認を得る必要はない。ただ、CPPに基づいてすでに州法で石炭火力発電所規制等を進めているカリフォルニアやニューヨークなどの温暖化対策重視州との調整が課題となる。

 

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   また国際的には、CPP廃止で、米国がパリ協定で公約した2025年までに温室効果ガス排出量を05年比で26~28%減らす目標の達成手段がなくなるだけに、米国はパリ協定離脱に向かうか、もしくは無視の形を続けるか、ということになり、その影響が、各国の政策に及ぶ可能性がある。トランプ大統領は協定からの離脱については、選挙期間中に言及したものの、その後は触れていない。

 

 しかし、世界2位の温暖化ガス排出国である米国が、パリ協定の公約を実現する中心政策の旗を降ろすことは、協定離脱を明言しなくても、公約を遵守するつもりはないとの、明確な方針転換を示したは間違いない。パリ協定は、途上国を含め、すべての国・地域が参加して各国の温暖化ガス削減目標の達成を目指す枠組みであり、米国の“実質離脱”は協定自体の存続性に疑念を生み出すとみられる。

 

 パリ協定の命運を握るとみられるのが、来週、訪米する習主席とトランプ大統領の会談だ。世界最大のCO2排出国で、オバマ政権とは温暖化対策で共同歩調をとってきた中国が、後ろ向きに転じる米国と袂を分かつのか、あるいは、温暖化対策のコスト負担を避ける米国の狙いに同調するか。関心は米中首脳会談に切り替わっている。

 

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/03/28/presidential-executive-order-promoting-energy-independence-and-economi-1