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文在寅韓国大統領 「脱原発」を宣言。原発新設を白紙化。稼働延長も認めず。「福島原発事故は原発が安全でも安価でもエコでもないことを明確に見せた」(各紙)

2017-06-19 21:53:17

Koreaキャプチャ

 

 各紙の報道によると、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は19日、韓国で最初に商業用原子力発電所として稼働した古里原発1号機(釜山市)の運転停止の式典に出席し、「原発政策を全面的に再検討し、原発中心の発電政策をやめ、『脱核時代』に進む」と宣言した。大統領は「準備中の新規原発の建設計画を全面的に白紙に戻し、原発の設計寿命を延長しない」と明言した。

 

 文大統領は大統領選挙期間中から「脱原発」を公約の一つとして掲げていた。今回、運転を停止した古里原発1号機は、2012年2月に、定期点検中に外部電源が停止、非常用ディーゼル発電機も作動しない全電源喪失事故を引き起こすなどの不祥事が相次ぎ、運営会社の「韓国水力原子力会社(KHNP)」が2017年6月で停止すると決めていた。http://rief-jp.org/ct4/70583

 

   文大統領は、同原発の停止を原発政策転換の象徴として位置づけ、同機の運転終了を受けて、「脱原発は逆らえない時代の流れ」と強調した。今後、時間をかけて他の原発についても徐々に減らしていくとして、設計寿命を延長して稼働している月城(ウォルソン)1号機についても、電力需給状況を踏まえ、できるだけ早期に閉鎖する、と表明した。

 

正式に廃炉が決まった古里1号機
正式に廃炉が決まった古里1号機

 

 さらに大統領は、「建設中の新古里5・6号機は安全性や工事の進み具合、投入・補償費用、電力設備予備率などを総合的に考慮し、できるだけ早いうちに社会的な合意を得たい」と述べた。韓国メディアは、この発言を受けて、新古里5・6号機の建設中断の可能性を報じている。

 

 大統領は脱原発に舵を取る理由として、2016年9月、原発集積地である南東部の慶州で観測開始以来、最大規模のマグニチュード(M)5.8の地震が発生したことや、日本の東京電力福島第一原発事故などに触れた。にと指摘、「もはや韓国が地震の安全地帯ではないことを認めなければならない」と語った。

 

 さらに、「先進国は急速に原発を減らし、脱核を宣言している。これに対して、われわれは(原発を)増やし、世界で原発が最も密集する国になった」として、「可能性は極めて低いが、もし原発事故が起きれば想像できない被害につながる」と懸念を表明した。

 

 文大統領は「新政権は原発の安全性確保を国の存亡がかかった安全保障問題として認識し、対処する」とし、「原子力安全委員会を大統領直属の委員会に格上げし、多様性や独立性などを強化し、大統領が直接点検する」と、政治の決断を示した。韓国の地理的条件、エネルギー状況等は日本と極めて似ている。異なるのは政治家の現状認識と、決断力の違いということのようだ。

 

 大統領は原発の安全基準や原発運営の透明性を大幅に強化するとして、「新政権では国民の安全と関連があることは、透明性を確保しながら国民に伝えることを原発政策の基本とする」と説明した。

 

 もちろん韓国でも産業界には、脱原発に舵を切ることは、電力需給をひっ迫させるとの懸念や、代替エネルギー源の再生可能エネルギー発電のコスト高による電気代の上昇、さらに膨大な原発廃炉費用などを取り上げて、慎重論も少なくない。こうした議論に対して大統領は、「脱原発は逆らえない時代の流れで、数万年、この地で生きていく子孫のため、今から始めなければならない」と訴えた。

 

 今後は、再生可能エネルギーや液化天然ガス(LNG)発電、太陽光、海上風力などの代替エネルギー産業を積極的に育成する方針を、同時に示した。また温暖化問題を悪化させる石炭火力発電所についても、「原発と共に減らし、天然ガス発電設備の稼働率を増やす」とした。石炭火力の新規建設を全面中断し、老朽化した石炭火力10基の閉鎖措置も任期内に終える、とも宣言した。

 

<韓国の原発>

 韓国では原子炉19基が日本海側を中心に集中して立地している。古里原発で使用済み核燃料の火災を伴う事故が起きれば、日本でも西日本を中心に最大2830万人が避難を余儀なくされるとの試算もある。文政権の前の、李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)両政権は原発依存を高める政策を取ってきた。特に、朴政権は2029年までに36基に増やす計画を立てていた。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2017/06/19/0500000000AJP20170619001400882.HTML