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年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)国際社会で非難が集中するクラスター弾製造企業向け株投資継続を宣言。ESG投資方針で内外にズレ(各紙)

2017-07-08 18:55:56

 

 「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)は先に環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視する株投資方針を打ち出したが、高橋則広理事長は7日、保有する非人道的兵器「クラスター弾」製造の外国企業株について、「ESG課題はほかにも数多くあり、運用会社がクラスター弾の優先順位をどう考えるかは(運用会社)それぞれの判断」と述べ、引き続き投資を継続する考えを示した。

 

 各紙の報道によると、高橋理事長は2016年度の運用実績について説明する中で、GPIFの資金運用先に含まれている「クラスター弾」製造企業の米テキストロン社の株の扱いについて質問を受けた。GPIFは同社の株を3月末時点で、約190万株保有していることが知られている。http://rief-jp.org/ct4/69837

 

 テキストロンは、現在はクラスター弾は製造中止と発表している。だが、在庫は保有しており、今後、在庫販売の可能性も指摘されている。このため、クラスター弾廃絶を求めるNGOらは、同社が完全に事業を止めるまで投資すべきではないと求めている。

 

 GPIFは株式投資の運用に際しては、自らが直接運用するのではなく、運用方針を示して選んだ運用会社に任せる投資手法をとっている。記者会見では、運用会社にどのような判断を求めるかを問われたが、高橋理事長は運用会社の判断を尊重する方針を変えるつもりはないことを強調した。

 

 同社のテキストロン株の保有状況は、昨年3月末時点の192万株とされ、今年3月末時点でもほとんど変わっていない。

 

「クラスター弾」の廃絶を目指す国際的NGOの「クラスター兵器連合(CMC)」。日本を含む世界の金融機関による製造企業への投融資報告を公表。
「クラスター弾」の廃絶を目指す国際的NGOの「クラスター兵器連合(CMC)」。日本を含む世界の金融機関による製造企業への投融資報告を公表。

 

 一方でGPIFは日本株については先ごろ、ESG投資を促進するために、米指数算出会社MSCIと英FTSEが作った3指数を選択、これらの指数に基づいて、ESG活動に優れ、かつ投資リターンも期待できる投資先を300社程度を選んで投資することを決めている。日本株の場合も個別株ではなく株価指数に基づき運用会社に投資を任せる形だが、選定した指数はGPIFが重視するテーマの「女性活躍」に特化した指標も含まれる。

 

 外国株投資に際しても、クラスター弾等、社会に影響を及ぼす特定のテーマを除外する指標を運用会社に指示して選別することは可能とされる。しかし、GPIFは、日本株については選定した指標に基づいてESG株投資を拡大していく方針を打ち出しているが、外国株については従来通りの運用方針を継続するとしている。ESG株投資の姿勢が内外株で一致していない、との批判も受けそうだ。

 クラスター爆弾禁止条約(通称・オスロ条約)は2010年に発効し、日本を含む101カ国が批准している。同条約では、クラスター弾の生産、貯蔵、使用、移譲の禁止のほか、被害者本人のほか、家族や地域への支援を義務として明文化している。同条約には製造企業への投融資の禁止条項はないが、条約批准国のうち28カ国が禁止、さらに法律で禁じることを明記している国は10カ国に上る。

 GPIFの2016年度の全体の運用実績は、トランプ米大統領の登場を受けて、国内外の株価が大きく上昇したことなどから、7兆9363億円のプラスとなった。16年度末時点での運用資産は過去最大の144兆9034億円。運用利回りは5.86%で、黒字は2年ぶり。運用益を資産別にみると、国内株が4兆5546億円と最も大きく、外国株式が4兆3273億円で続いた。

http://www.gpif.go.jp/