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「『福島が原点』、口先だけ」。東電新経営陣に対して、原子力規制委で批判相次ぐ。規制委もこれまで「口先」でなく、適切な監督・指導をしてきたの?(各紙)

2017-07-10 15:52:55

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  各紙の報道によると、原子力規制委員会は10日午前、東京電力の川村隆会長や小早川智明社長ら新経営責任者との意見を交換した。事故を起こした福島第一原発の廃炉など今後の原子力事業に対する東電の姿勢をただした。小早川社長は「福島事故の責任を全うすることが新体制の原点」と強調したが、田中俊一委員長は「口先だけにしか聞こえない」「東電には主体性が見えず危機感がある」と厳しく指摘した。

 

写真は、原子力規制委員会の意見聴取に応じる(左から)東京電力ホールディングスの小早川智明社長、川村隆会長。右から2人目は田中俊一規制委委員長=10日午前)

 

 意見交換は東電の経営陣が交代したことを受けて臨時会議として開かれた。小早川社長は6月の就任直後から、福島第一原発や周辺市町村を訪問したことを説明、「全社員が福島を忘れずに寄り添うことが大事だ」と、規制委員に理解を求めた。

 

 これに対して、田中委員長は「口先だけにしか聞こえない」と辛らつな印象を述べた。他の委員からも「柏崎原発の再稼働に前のめりな印象を受ける」「言葉だけではよりどころにできない」などの批判が続出した。やり取りを受けて田中委員長は「事故を起こした東電は普通の事業者ではない」「今日はいろいろな疑問を解消しようとしたが、残念ながら納得できない」と付け加えた。

 


 東電は再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)の審査の促進を要請しているが、田中委員長は「福島第一原発の廃炉を主体的にやりきる覚悟がなければ柏崎原発の運転は認められない」とした上で、「多くの課題を抱えているが、東電の主体性が見えない」と東電の対応が、政府任せである点を厳しく批判した。

 

左が小早川社長。右は川村会長
左が小早川社長。右は川村会長



 会合後、取材に応じた小早川社長は「福島は経営判断の最優先課題」「事故当事者としての事業遂行能力を問われたと承知している。全うすると何度も言ったが、形にして示さないと、と強く感じた」と反省を口にした。

 

 規制委が電力事業者のトップに、施設や設備の安全対策だけでなく、社内の「安全文化」について直接問いただすのは異例ではある。ただ、これまでも規制委は東電に対して意見を表明し、監督する立場で、経営に注文をつける役割を担ってきたともいえる。規制委自体が、福島事故後6年以上を経過する中で、そうした役割を十分に果たしてきたのか、という疑問も生じる。

 

 規制委の田中委員長は、先に関西電力高浜原発のある福井県高浜町を訪問して地元住民らと意見交換した際、北朝鮮のミサイルの脅威について、「(原発を狙うより)東京都のど真ん中に落としたほうがよっぽどいいんじゃないか」と語り、その後、「不適切だった」と釈明する騒動を引き起こしている。

 

 田中委員長の発言は、高浜原発3、4号機の再稼働に関して、高浜町民との質疑応答の中で、「ミサイル攻撃への対策は」と問われた際に出た。委員長は「原子力規制の範囲を超える」としつつ、「(敷地内での)大型航空機落下についての対策があり、相当の対応はできる」と説明した後、「小さな原子炉にミサイルを落とす精度があるかどうかよく分からない。私だったら東京都のど真ん中に落としたほうがよっぽどいいと思う。もう何万人、何十万人と住んでいるから」と自論を展開した。

 

 田中委員長はその後、報道陣から「不適切では」と問われ、「戦争は絶対避けて欲しいが、戦争状態になったら原子炉だけの問題じゃないという意味だ」「例えが不適切でないかといえば、不適切だった」などと釈明したという。同委員長は「口先だけ」ではなく、「口が軽く」「危機感に乏しい」と批判されそうだ。

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