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東電福島第一原発3号機。原子炉圧力容器から漏洩した核燃料が、格納容器の下部に滞留。極めて不安定な状態で、大気中に露出するリスクも(RIEF)

2017-07-23 08:51:38

fukushimadeburi2キャプチャ

 

   東京電力が実施した福島第一原発3号機の原子炉格納容器内の水中ロボットによる調査で、圧力容器に開いた穴から溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)とみられる塊が垂れ下がっていることがわかった。高度の放射線量を放出するデブリが、圧力容器よりも強度の弱い格納容器のみで、辛うじて覆われている状態が確認された。今後、強力な地震などが発生した場合、デブリが何らかの形で露出するリスクもある。

 

写真は、東電福島第一原発3号機の圧力容器下部の状況)

 

 東電の調査では、水中ロボットを、通常は核燃料を投入する圧力容器を支えるコンクリート製の土台の開口部から投入し、圧力容器の下部まで移動させ、状況を撮影した。圧力容器の下部にはデブリのようなものが岩石のように固まって垂れ下がっていた。原発事故で圧力容器内の核燃料は、冷却が止まり、2500度前後まで過熱されて溶け出し、圧力容器の底に開いた穴から流出、格納容器の底に溜まったとみられている。

 

 今回の調査で、圧力容器の下部にデブリの垂れ下がりがみられたのは、そうして漏れ出した高濃度の放射線量を持つ燃料デブリが、そのまま固まって堆積していることを示す。デブリは下部の水中にも溶け落ちているとみられるが、垂れ下がった部分はそのまま格納容器中に露出しているようだ。

 

 もう一つの問題は、格納容器の下部に溜まった冷却水だ。水深6mほどあるが、水は絶えず格納容器のどこかから流れ出ているとみられる。格納容器自体にも穴が開いており、そこから高濃度の汚染水が地下のどこかに流れ出ていることになる。

 

fukushimadeburi3キャプチャ

 

 事故原発の圧力容器の破損によって漏れ出た核燃料がデブリのような塊状になっている様子は、今年初めに実施した2号機での調査でも見つかっている。2号機の調査ではロボットが途中で機能不全に陥ったことから最終確認はできていない。高濃度の放射線量にやられたためだ。

 

 東電はロボット調査のデータをもとに、漏れ出たデブリをどう取り出すかの方針を今夏にも決める方針という。だが、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「デブリの取り出し方法を具体的に確定できる状況には程遠い」と認めるように、専門家は異口同音に、デブリを取り出す方法は現時点で無いに等しいと認めている。

 

 そこで別の問題が浮上する。高濃度の放射線量を放出するデブリが、穴の開いた格納容器の下部に溜まったまま、取り出せない状況が当分の間続くという状況は、極めてリスクが高い、ということである。万一、新たな地震が発生して事故原発が再び大きく揺さぶられるような事態が起きるとどうなるか。http://rief-jp.org/ct4/67678

 

fukushimadeburi1キャプチャ

 

 頑丈な圧力容器がすでに壊れ、相対的に強度が弱い格納容器だけで辛うじてカバーされているのが現実なのだ。格納容器自体にも底に穴が開いているとみられる。不安定な状態の原子炉の中で、固まったデブリが何らかの拍子で、大気中に露出したり、高濃度汚染水が地表に逆流するリスクもないとはいえない。事故処理をできない状況が当分(10年や20年では済まず、100年、200年単位の可能性もある)続くとすれば、このままの状態を放置するわけにはいかないのは、だれの目にも明らかだろう。

 

 チェルノブイリ原発は、1986年の事故から30年以上が経っている。だが、事故原子炉の内部調査はほとんどできていない。当初の応急措置の石棺は損傷が激しく、昨年11月に鋼鉄製のシェルターによるカバーがようやくできた。

 

 新シェルターは幅257m、高さ108mで、重さは3万6000㌧。地上建造物としては世界最大規模で耐用年数は100年。これからの100年の間に、燃料の取り出しをはじめとする廃炉作業が完了しないと、もう一回、シェルターを作り直さねばならないことになる。100年後に。http://rief-jp.org/ct4/66065

 

 東電福島の事故の場合、3つの原子炉が同時に「底抜け」になっているとみられることから、それぞれを鋼鉄製のチェルノブイリ級のシェルターで覆うとすると、総額5000億円ほどの資金が必要になる。ただし、それはあくまでもカバーの話であり、デブリの取り出しには、さらに膨大な費用と技術開発が不可欠となる。

 

 東電福島原発の事故処理は、手探りがようやく始まったばかりの状況だ。

 

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2017/images2/handouts_170722_05-j.pdf

http://photo.tepco.co.jp/date/2017/201707-j/170721-01j.html