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英ナショナル・ポートレート・ギャラリーの受賞画家が、スポンサー企業BPの温暖化対応を批判して、賞金の一部を環境NGOらに寄付(RIEF)

2017-09-11 08:01:32

 

 英国の権威ある「ナショナル・ポートレート・ギャラリー」の優秀ポートレート(肖像画)賞に選ばれた若手の画家が、同賞スポンサーの石油大手のBPが、絵を石油企業のイメージ向上に使うことに抗議して、賞金の一部を環境NGOのグリーンピース等が展開する「Art Not Oil」キャンペーンに寄付した。企業のCSR活動での社会貢献に対する一つの問題提起との見方もある。

 

 BPは同ギャラリーのスポンサーを38年間続けており、ポートレート賞のスポンサーの引き受けも28年になる。2017年の賞には、世界87カ国から2580件の応募があった。このうち、若者芸術家賞を受賞した26歳のニュージーランドの若手画家Henry Christian-Slane氏は、自らのパートナーの肖像画「Gabi」を描いて、賞金7000ポンド(約98万円)を手にした。

 

 賞金はBPのCEOのBob Dudley氏から直接、手渡された。しかし、Slane氏は「賞を受けたのはうれしい。だが、BPのPR戦略の一部として扱われるのは心地良くない」と述べ、「BPの事業に抗議する象徴的行動」として賞金の一部(1000ポンド)を、グリーンピースと非営利団体「Art Not Oil」の共同キャンペーンに寄付した。

 

スポンサーのBPに抗議の意思表示をしたHenry Christian-Slane氏。同氏の右後の絵が受賞作
スポンサーのBPに抗議の意思表示をしたHenry Christian-Slane氏。同氏の右後の絵が受賞作

 

 同氏はその狙いを次のように述べている。

 

 「この行動が、BPが芸術のスポンサーとなっていることで、気候変動に対してBPが及ぼしている影響を免罪しないことを、人々に気づかせることを期待している」

 「BPのような大規模な石油企業は、化石燃料開発による温室効果ガスの排出を防ぐ能力を持っているはず。われわれは彼らが責任を果たすよう要求続けねばならない。一人一人の個人も、BPに促すことができる」

 

グリーンピースなどが展開している「Art not Oil」キャンペーン
グリーンピースなどが展開している「Art not Oil」キャンペーン

 

 BPは2010年に北米メキシコ湾で海底掘削事故を起こし、史上最悪の大規模な海洋汚染を広げた。さらに石油・ガス等の化石燃料開発を世界的に展開しており、地球温暖化加速の原因企業として環境NGOの攻撃を浴びている。

 

 一方で、同ギャラリーだけでなく、英国で有名なテートギャラリーや大英博物館、ロイヤルオペラハウス、ロイヤルシェークスピア・カンパニーなどに、今後5年間に総額7500万ポンドの投資を約束しているなど、英芸術界にとって大スポンサーとしても知られる。

 

 グリーンピースなどはこうした大企業の「免罪符」的スポンサーシップが、美術館自体を企業スポンサーなしには維持できない状況に陥らせており、長い目で見れば、芸術の退廃につながる、と批判している。

 

 企業のCSRとして本業とかかわりがなくても社会貢献活動に熱心な企業は日本にも多い。企業のイメージアップにつながれば、という理由が主だが、社会貢献を受ける側が「(問題のある企業活動の)免罪符に利用されていないか」との自問を続ける必要があるということが、Slane氏のメッセージでもある。

http://www.npg.org.uk/whatson/bp-portrait-award-2017/exhibition/