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東レでも製品の品質データの改ざん発覚。昨年7月に把握済み。ネットで情報が流れ、慌てて公表。東レ出身の榊原経団連会長はどう語るか(各紙)

2017-11-28 12:17:07

toreキャプチャ

 

 各紙の報道によると、東レの日覚昭広社長は28日午前、記者会見し、同社の子会社「東レハイブリッドコード(THC)」が顧客に納入したタイヤなどに使う繊維製品の品質データを改ざんしていたことを公表した。日覚社長は「法令違反やリコール(回収・無償修理)、安全上問題がある場合には当然、公表する」と説明したうえで、データが書き換えられた製品については「安全性には問題ないと考えている」と語った。

 

写真は、記者会見で謝罪する東レの日覚昭広社長(左端))

 

 THCが データを改ざんしていたのは「タイヤコード」といわれる自動車用タイヤの繊維製補強材や、自動車用ホース・ベルトの3品目の補強材。現在、経団連会長を務める榊原定征氏が東レ社長を務めていた2008年4月から、データ改ざんが始まっていたという。16年7月まで149件、約400㌧分の品質検査のデータを書き換えていた。

 

 これらの製品は自動車関連メーカーなど国内外の13社に供給していた。不正の対象額は1億5千万円。東レの認識では、現時点で法令違反はないほか、製品の安全性にも問題はないとしている。

 

 だが、経団連会長企業での「不祥事」は、日産自動車、神戸製鋼、三菱マテリアルなどと、最近、相次いで発覚する日本の大企業のデータ改ざん問題を象徴する形でもある。問題は、生産現場でのデータに対する軽視と、それらを経営層が把握できない組織構造の両方にある。日本の製造業に共通する「病巣」ともいえ、事態は深刻だ。

 

 東レの製品の品質データが改ざんされているとの指摘は、11月初めにインターネット上の掲示板で複数の書き込みがあったという。データ改ざんは、2016年7月に起きていたが、THCの鈴木信博社長は、「改ざんは『規格値からわずかに外れているだけで異常レベルでない』との勝手な解釈から起こった。煩雑な作業をしたくないということも動機だったようだ。データの外れが僅差ということで、安全性に問題ないと認識していた」と述べている。

 

 ネットでの書き込みは、神戸製鋼や日産自動車などの問題が発覚したことから、関係者と思われるところから出たと見られている。この点で、日覚社長は、「何件か問い合わせがあった。神戸製鋼や三菱マテリアルの問題で品質に関心が高まるなか、正確な内容を公表すべきだと考えた」と、今回の公表理由を説明している。

 

 その上で「「基本的な考え方としては、法令違反やリコールなどで一般消費者に影響がある場合や、安全性や社会に影響ある場合は当然、公表する。ただ、今回はデータ書き換えでお客様の安全には影響ないと判断した。まずはお客様への報告と安全確認を優先した」と述べて、法令違反などに該当しないとの認識を強調した。

 

 THC以外でのデータ改ざんなどの可能性については、「「東レ本体のほか国内外のグループ全社の品質管理者にアンケートを実施し、懸念がある893件を調査した結果、現在137件で詳細な調査をしている。その調査もほぼ完了に近づいているが、品質を巡る不法行為は見つかっていない」として、現在のところTHC以外での問題はないとの立場だ。

 

 ただ、経団連会長を輩出したトップ企業で、データ改ざんがあったことを問われると、日覚氏は「これまで『品質保証は将来の利益の源泉である』と繰り返し言ってきた。誠に遺憾だ。一層のコンプライアンス強化に取り組む」とだけ語った。